素直な自分を見せることが、実は大切
キム 僕は大人になって、特に思うんですが、弱い自分を認めることはいかに勇気のあることか、ということです。学生が面接官に対して自分の強いところ、魅力的なところだけじゃなくて、自分の弱さについてしっかり向き合って、それを言葉にして出せるとしたら、印象は大きく変わりますね。僕なら、人格的にすばらしいなと感銘を受けるときがある。
学生のみなさんだって、たぶんサークルで後輩が入ってきたときに、私はここまでできますっていうことをずっと主張するよりは、私は何もできないんだけど一生懸命やります、と伝えてくれる後輩に対して、手を差し伸べたくなるのではないでしょうか。
本田 面接で見ているのはポテンシャルですからね。この人がうちの会社に入ったら、こうやって成長して、こういうふうに貢献してくれるだろうな、というポテンシャルが大事だと思うんです。その人がどういうポテンシャルを持ってるかっていうのが相手に伝わればそれでいい。
キム 面接官は学生には期待してないんです。たぶんいろんなものをプレゼンしてくるっていうことを期待は全然してなくて、ただその人がちゃんと自分を見せてくれたときに、その人がこれからいろんなことを教育して体験をさせていくとどれくらい成長するかっていう、将来的な成長の度合いを評価できる。
でも、学生から見るとどうしても評価される側なので、自分の周りと自分を比較して、自分をよく見せようとするところに走ってしまうと、さっきの安藤さんの好きな人の前では自然体になれず、相手に合わせた自分というものをつくり上げていく中でだんだん自分が失われていってしまう。
本田 無理したり、かっこつけない方がいい。あとで苦労するだけですからね。それでうまくいったとしても。
キム 日本の場合は、相手が心を開いてくれたら、自分も心を開くという待ちの姿勢のほうが、謙虚だと思われることがあるんですが、自分から心を開くことによって、相手が心を開くこともあると思うんですよ。
自分を閉じていたら、やっぱり面接官も閉じたままだと思う。さきほど安藤さんが、OB訪問でもなかなか一度では心を開いてくれない、と言われましたが、熱意を見せれば変わって来ることもあると思うんですね。自分は完全に心を開いています、ということが相手に伝わった場合に、人間というのは大きな信頼と愛情を寄せたいと思うと僕は考えています。
出発点を相手に置くのではなく、自分自身に置いて、それを見せることによって、全体の関係性を変えていく。そうした積極的な姿勢が、実は求められているのではないかと思います。就活なら、それは自分を飾らない、大きく見せない、ということです。
<対談了>
◆「対談 媚びない人生」バックナンバー
第1回 媚びない人生とは、本当の幸福とは何か 『媚びない人生』刊行記念特別対談 【本田直之×ジョン・キム】(前編)
第2回 大人たちが目指してきた幸福の形では、もう幸福になれないと若者たちは気づいている【本田直之×ジョン・キム】(後編)
第3回 日本人には自分への信頼が足りない。もっと自分を信じていい。【出井伸之×ジョン・キム】(前編)
第4回 世界を知って、日本をみれば「こんなにチャンスに満ちあふれた国はない」と気づくはずだ。【出井伸之×ジョン・キム】(後編)
第5回 苦難とは、神様からの贈り物だ、と思えるかどうか【(『超訳 ニーチェの言葉』)白取春彦×ジョン・キム】(前編)
第6回 打算や思惑のない言葉こそ、伝わる【(『超訳ニーチェの言葉』)白取春彦×ジョン・キム】(後編)
第7回 いつが幸せの頂点か。それは死ぬまで見えない【(『続・悩む力』)姜尚中×ジョン・キム】(前編)
第8回 国籍という枠組みの、外で生きていきたい【(『続・悩む力』)姜尚中×ジョン・キム】(後編)
第9回 「挑戦しない脳」の典型例は、偏差値入試。優秀さとは何か、を日本人は勘違いしている【茂木健一郎×ジョン・キム】(前編)
第10回 早急に白黒つけたがる人は幼稚であると気づけ【茂木健一郎×ジョン・キム】(後編)
第11回 やりたいことがたまたま会社だった。だから、自然体で起業ができた。【リブセンス村上太一×ジョン・キム】(前編)
第12回 不安は、将来に対する可能性の表れである。【リブセンス村上太一×ジョン・キム】(後編)
第13回 一番怖いのは、頭が固まってしまうこと【安藤美冬×本田直之×ジョン・キム】(前編)
第14回 面接で落とされたおかげで今の自分がいる【安藤美冬×本田直之×ジョン・キム】(中編)
【ダイヤモンド社書籍編集部からのお知らせ】
四六判・並製・256頁 ISBN978-4-478-01769-2
◆ジョン・キム『媚びない人生』
「自分に誇りを持ち、自分を信じ、自分らしく、媚びない人生を生きていって欲しい。そのために必要なのは、まず何よりも内面的な強さなのだ」
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