「大音量の音楽」をやめて
車外に耳を澄ませよう

 安全運転を実践したい人は、こうした感覚に基づく「認知」を重要視してみてください。

 今までよりも注意して周囲を見る。いろいろな音を聞く。ステアリングやシートから伝わってくるフィーリングを感じ取る――。そのためには不要な情報を排除し、情報を感じ取りやすくすることも大切です。

 30分でいいですから、カーナビの音声や音楽、ラジオなどを消してみましょう。ステアリングやシートからの情報は、正しいドライビングポジションで座らないと減衰します。ですので、少々窮屈だと感じても正しいポジションで運転してみることもお勧めします。

 そうすると、きっと何かを感じ取れます。感じ取った情報の中に、自分が苦手な運転技術に関連するものがあれば、課題を克服するヒントが見つかるはずです。

 さて、「運転が上達する人・しない人」に話を戻します。冒頭では教習中や免許取り立ての時期を例に出しましたが、運転が上達する人は、その後(=ある程度運転に慣れてから)も常に運転が上達したいと思い、そのために「どうしたらいいか」を考えています。

 こう書くと、当たり前のことだと思われるかもしれません。ですが、多くの人は運転がある程度できるようになると、運転が上達したいという気持ちがうせてしまうのが現実です。

 経験を積むにつれて、教習所の生徒や新米ドライバーだった頃のワクワク感がなくなり、単なる「作業」になるイメージです。また、ドライブそのものは「楽しい」と感じているけれど、自身の技術については「もう十分に運転は上達した」と満足している人もいます。

 いずれにせよ、そうした人たちは、今以上の上達は見込めないでしょう。「自分は運転に慣れた」と思い込んでいることが落とし穴となり、交通ルール違反で罰金・減点を課されたり、事故を起こしたりするかもしれません。大音量で音楽を流しながら走行し、前述した「認知」がうまく機能しなくなるケースも十分に考えられます。

 繰り返しになりますが、それらを避ける上で大切なのは「上達したい」という気持ちです。少しでもいいので、運転を覚えた頃のような「上達するにはどうすればいいか」と探究する気持ちを思い出してください。余裕があれば、そのための方法を考えたり、調べたり、習ったりして実践することも重要です。書籍やYouTubeなど、方法はいくらでもあります。

「自分の方法こそが最も正しい」という考え方も捨てないと上達はしません。「自分の運転は本当に正解なのか?」と、自問自答してみることも大切です。

 速く、かっこよく走るだけが運転上手ではありません。急発進や急ブレーキを極力使わず、同乗者が眠ってしまうほど心地良い運転も「上手」だといえます。切り返しに頼らず、車庫入れを一発で決めるのも「上手」です。

 クルマの運転とは奥深いもので、慣れてきた人にも成長の余地は必ずあります。自分の中で上達したいテーマを持って、それに対して挑戦してみることが、安全で楽しいカーライフを送る鍵になります。