この替え歌動画はYouTubeですぐに何十万もの再生回数を獲得。「あの高揚感は、これまでの人生で感じたことのないものだった」とカレンは語っています。

「なぜなら私はたくさんの不安を抱えていて、誰かに特別だと認めてほしかった。それが突然、何万ものインターネット上の見知らぬ人たちに『あなたは特別だよ』と言ってもらえた。それをもっと欲しいと感じました」

 カレンは自己紹介で「ソーシャルメディア中毒者」と名乗っていましたが、バイラルヒットは強力な薬であり、良い薬にも、悪い薬にもなります。

 彼女は「人類は歴史の大半において神に祈っていたけれども、最近ではアルゴリズムに祈っているような気がする」と述べています。何かを投稿するたびに、アルゴリズムに気に入られるかどうか、うまくいかなければアルゴリズムのどこに引っかかってしまったのかを考えるようになっていると。

評価されないのは
アルゴリズム側に問題が?

 カレンも以前は投稿が思ったほど評価されないと、自分の趣味や判断がおかしいのではないかと考えていました。しかしある日、アルゴリズムの側に欠陥があると考えるようになります。カレンのこの話に、講演会場を埋めるクリエイターたちからは大きな拍手が湧きました。クリエイターたちの多くも、カレンと同じようにアルゴリズムを疑っていたのです。

「アルゴリズムは、ユーザーが好きなもの、望むものを測定しているわけではない。注意を払うかどうか(アテンション)を測定して、その注意を捉えて広告を表示しているだけです」とカレンは言います。

 もし現実世界で自動車事故を見たとしたら、自分の安全のためにそこに注意を払うはずです。アルゴリズムは、その様子を捉えて「この人は自動車事故が好きなんだ」と判断して、次から次へと自動車事故のコンテンツを見せるようになるといったところがあります。しかし、それはおかしなことだとカレンは語ります。