いまでは、人々が関心を持ったものを評価するようにアルゴリズムを学習させることができます。AIは人々が感心を強く持ったかどうかを評価する関数を組み込むことで、よりアテンションを得やすいクリエイティブを選び取るようになります。さらに生成AIもそうしたクリエイティブを作るようになります。しかも生成AIによって作られたクリエイティブが人々のアテンションを得ると、よりその方向に学習が進んでクリエイティブが過激化していきます。
このままでは「アテンションさえ得られれば(何をしても)よい」という社会になりかねません。実際、AIがなくても生身のYouTuberのチャンネルでもコンテンツの過激化が起きたのは、冒頭に記したとおりです。
アテンションエコノミーでは承認欲求が満たされるだけでなく、注目されることによるインセンティブ、経済的効果も高くなっています。以前、NHK『クローズアップ現代』で私人逮捕系YouTuberが取り上げられた回では、月に数千万円を稼いだこともある有名なYouTuberが、過激な動画配信の“ドラッグのような”危うさについて語っています。「完全に数字に追われて、もっともっとという気持ちになっていた」というその声には、実感がこもっていました。
ヒット量産のクリエイターが語る
バイラルヒットのワナ
以前「ビジネスパーソンのクリエイティブ力を格段にアップ!『最新の画像生成ツール』使いこなし術」でも紹介したアドビの年次イベント「Adobe MAX 2023」では、2日目に「インスピレーション・キーノート」という基調講演が行われます。講演には世界を代表するクリエイターたちが登壇し、自身のクリエイティブプロセスや現在のクリエイティブシーンのトレンド、クリエイティブの未来について語ります。
今年はソーシャルメディアの功罪について語ったカレン・チャン氏の話に、大変心を奪われました。
カレンは米国で数々の受賞歴を持つアートディレクター兼バイラルビデオクリエイターです。私が彼女を知ったのはこの講演が初めてでしたが、マイクロソフトでExcelのプログラムマネジャーを務めていたようです。彼女の最初のバイラルヒットは、マイクロソフトを辞める際に偶然できた替え歌でした。