カレンが挙げた5つの方策のうち、最後の1つは「デジタルデトックス」「デジタルウェルビーイング」に通じる話です。デジタルウェルビーイングについては、その重要性が取り上げられるようになって久しく、グーグルもアップルも、AndroidやiOSに数年前から機能を搭載して、ユーザーが“デジタル漬け”にならないように配慮しています。にもかかわらず、こうした機能はユーザーにはあまり使われていないように思います。

 前回記事「“頂き”を目指す!登山の魅力とビジネスとの共通点とは」で紹介したように、自然環境で一定以上の時間を過ごすと幸福感を得やすいという研究もあります。ハイテク業界でクリエイティビティを発揮する人たちにこそ、デジタルから離れて過ごす時間は実は大事なのではないかという気がします。

拡大一辺倒のソーシャルメディアは
いつまでも続かない

 私はソーシャルメディアが拡大一辺倒であり続けるのは無理があると、かなり前から考えていました。LinkedInでもFacebookでも、どのSNSにも「次から次へフォローしフォローされる」アルゴリズムが必ず入っています。しかし人間は、そう多くの知り合いといろいろな情報の共有ができるわけではありません。むしろ、対する相手が多くなればなるほど、投稿すべき内容に気を配ることが増えます。気を遣わずに無邪気に投稿してしまう人は、しばしば“炎上”しています。

 誰とでもやり取りできるオープン型でも、限られた人の間だけで交流できるクローズド型でも、ソーシャルメディアの「フォローしフォローされる」仕組みが拡大一辺倒になった世界のその先に、何があるのかは全く見当もつきません。

 実は以前、こうしたSNSへのアンチテーゼ的存在のサービスがありました。2010年にリリースされた「Path」というそのサービスは完全にクローズドなソーシャルメディアで、自分が共有したい人にしか情報が見えないというもの。さらに面白いのは、このサービスではユーザーがフォローできる人数が150人に制限されていたことです。150人というのは一説に、人間が安定的に社会関係を維持できる人数の上限(ダンパー数)といわれています。

 残念ながらPathは2018年にサービスを完全に終了してしまいました。当時はまだFacebookなどの勢いも強く、それに対抗し切れなかったのではないかと思います。ただ、こういうサービスがもう一度見直されるような機運もありそうです。