防犯カメラでは止められない“無敵の強盗”、侵入を防ぐ「備え」と命を守る「初動」とは?Photo:PIXTA

強盗や窃盗に関するニュースを目にする機会が増えた。いつも驚かされるのが、犯行の瞬間を捉えた防犯カメラの映像が残っていること。彼らは防犯カメラの存在に気づいていないのではない。防犯カメラがあることを認識したうえで盗みを働いているのだ。こうした“無敵の泥棒”は、プロか素人か。彼らの行動特性を専門家に分析してもらった。「犯行を未然に阻止する防犯対策」と「強盗犯と遭遇したときの防衛術」をここで確認してほしい。(構成/ライター 奥地維也)

“無敵の泥棒”が増加した背景

 いま、強盗が増えています。多くの人が自宅で過ごしていたため犯行に及びづらかったコロナ禍が明け、彼らの活動が再び活発になっているのです。強盗の低年齢化も顕著です(下図)。 これは、未成年の少年たちが小遣い欲しさから安易な気持ちで闇バイトの募集に応じて犯罪に手を染めていることを物語っています。

防犯カメラでは止められない“無敵の強盗”、侵入を防ぐ「備え」と命を守る「初動」とは?「犯罪統計資料」(令和5年1~11月分)をもとにダイヤモンド・ライフ編集部作成

 防犯カメラを恐れない“無敵の強盗”の多くは、こうした闇バイトの募集で集められた素人と、指揮役の玄人とで構成されています。2024年1月19日に滋賀県草津市のトレーディングカードショップで発生したポケモンカード盗難事件も、犯行をとらえた防犯カメラの映像を見ると、実行犯の1人は明らかに動きがどんくさく、素人であることは明らかでした。

 素人のほうが手加減してくれそう、と考えるのは間違いです。2023年1月19日に東京都狛江市で発生した強盗事件では、抵抗する力が弱いはずの90代の女性が殺害されました。犯行に及んだ10代から50代の実行犯4人は、全員が闇バイトで集められた素人。物取りに徹するプロは刑罰の重い強盗殺人を犯すことを避けますが、場慣れしていない素人は感情のコントロールが効かず、パニックから凶行に及ぶ危険があります。本当に怖いのは、素人のほうなのです。

ターゲットに
”選ばれない”ために

 狛江市の強盗殺人事件でも明らかになったように、素人で構成される“無敵の強盗”団には、雇い主である指示役が遠隔で指示が飛んでいます。プロの犯罪グループに属する彼らは、住人の行動パターンや目当ての貴重品の場所などを事前に把握したうえで、一般宅の強盗に臨みます。

 犯罪グループはこうした情報をどのように入手しているのでしょうか。まず、個人情報の取り扱い規制がまだ緩かった時代に名簿業者が作成していた各種名簿や、企業が流出させた個人情報を闇サイトで手に入れます。同時に、個人宛にスパムメールを送ってハッキングしたり、電話口でセールスやアンケートなどを装って情報を聞き出したりして、データを蓄積します。

 さらに、こうした情報を複数の犯罪グループ間で共有することで、より多くの、より詳細な個人情報が集約された“標的データベース”を作り上げます。この工程は「名寄せ」と言い、大規模な組織の場合は「名簿調達」とか「名簿作成」と呼ばれる役割を担当するメンバーが存在します。

 本名、生年月日、住所、電話番号、家族構成、出身高校・大学、勤務先、自宅金庫あり・なし、通信販売での高額商品購入履歴、詐欺被害履歴、電話の応対記録……データベースにはありとあらゆる個人情報が載っていて、「東京都」などと条件を指定して検索することもできます。百貨店の外商顧客リストが流出しているのを見たこともありますよ。金目のものを狙う強盗からすれば、喉から手が出るほど欲しい情報でしょうね。