物納手続を取っていたため
5年を経過するも時効とはならず

 さて、連帯納付義務に加え、時効というテーマもあります。日本のほとんどの税金は5年で時効を迎えます(贈与税は相続税法で特別に6年と定められています)。ただし、脱税など悪質な場合の時効は7年です。

 冒頭のケースは15年前の相続のことですので通常は時効が成立しているのですが、なぜ追及されてしまったのでしょうか。実はこのケースは、督促状が来たことによってではなく、「物納」で時効が中断していたのです。

 物納とは、税金をお金で払えない場合に、相続で取得した不動産や有価証券などの「現物」で納税する方法です。物納の申請中は徴収の猶予扱いとなり、時効は停止しています。なので15年以上経過しても国税徴収権が消滅しなかったのです。

 種明かしをすると、6人いる相続人のうち私の相談者を含む5人は申告期限内にお金で納税を済ませていましたが、1人だけ納税資金が足らず、相続した不動産の物納を試みていたのでした。他のきょうだいはこのことは知らなかったので、前述の督促状が届いたときには全員ビックリしていました。

 現在は物納申請をしてから3カ月以内に収納(物納を認めること)されるかどうかが判断されますが、当時は収納するかの判断に何年もかかるケースも多く存在しており、他の相続人の納税状況(滞納状況)は開示されないので、誰が未納なのかはわかりません。つまり、自分のところにいつ火の粉が降りかかってくるのかわからない状態だったのです。