第一の難関、後継者選び
時代遅れの先入観で「原石」を見逃すな!

 前述のケースのように、悲しい事態に陥らないためには、どうしたらいいのか。

 コンサルタントとして40年にわたって中小企業の事業承継に携わり、さまざまな事例に立ち会ってきたTOMAコンサルタンツグループ会長の藤間秋男氏は、事業承継のプロセスを4つに分けて解説する。「後継者探し」「継がせる準備」「バトンタッチ」「事業承継後のフォロー」の順に、注意点を見ていこう。

 第一に、会社の命運を左右すると言ってもいいほど重要なのが「後継者選び」だ。冒頭で紹介したように、「後継ぎがいない……」という嘆きが、日本列島のあちこちから聞こえる。

 後継者は大きく3つの属性に分けられる。実の子どもや親戚、婿養子など血縁関係にある人が継ぐ「親族内承継」、親族外の従業員が継ぐ「従業員(社内)承継」、社外の第三者が継ぐ「M&A(第三者承継)」の3つで、この中で最も多いのが親族内承継だ。

 テレビドラマでも「おまえは長男だからうちの跡取りなんだ」といったセリフをよく聞くが、家業を継ぐのは長男という風潮は現在もある。しかし今の時代、「跡取りは男子」という考え方は時代遅れ。

 今、企業社会で活躍が目覚ましいのが女性後継者たちである。2016年、安倍内閣で「女性活躍推進法」が施行されてから、大企業では女性の社長や役員が増えてきた。中小企業でも、親族内承継で娘を選択肢に入れる経営者が増えている。

 藤間氏の事務所に持ち込まれる相談も、「娘しかいないが、どうしようか」という諦めベースのものばかりでなく、「娘に継がせたいので、相談に乗ってほしい」という前向きなものも増えているとのこと。

 娘が家業を継ぎ、今やお馴染みの家庭用品となった「突っ張り棒」の市場で家業を大きく伸ばした平安神銅工業は、代表的な成功事例だ。

 子どもが2人以上いる場合は「兄弟承継」も選択肢。それぞれの個性を生かして、協力し合って経営を行うスタイルで成功している企業も多い。これについては、大人気の鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」を手がける愛知ドビーが好例だ。先代から家業を引き継いだ社長の兄、副社長の弟が平等の立場で経営を率いている。