他社で修業して、各部署を渡り歩き
「社長見習い」の1年間で仕上げ
第二に、後継者候補が決まったら、早速行いたいのが「継がせる準備」。一番良くないのが、急なトップ交代で、何も分からない後継者が経営を引き継ぐことである。
親族内承継の場合、後継者の育成期間をしっかりと取って、社長交代に備えるのが理想的だ。社会人の基礎を身に付けるため、他の会社で修業させるのは必須だが、ここでよくある間違いが「取引先の会社で修業させること」。将来の社長候補としてちやほやされて、修行どころか遊びに行っただけで終わる可能性が高い。
修業を終えて入社させたら、現場に配属。営業から経理まで一通り業務を経験させ、会社の仕事が全て分かるようにしておく。その際重要なのが、「各部門で、将来のNo.2を見つけておくこと」だ。後継者が社長になった時に一緒に経営を担う人材を、この時点から探しておくと良い。
いよいよ社長就任の時期が見えてきたら、就任前の少なくとも1年間は「社長見習い」の期間を設けて、社長のさまざまな仕事を後継者と共に行うようにしよう。これは、親族以外の社内承継の場合も同様だ。社内業務だけではなく、主要クライアントや銀行との話し合いなど、あらゆるミーティングにも同席させることで、後継者は社長の仕事を肌で感じることができる。社長就任への覚悟も固まってくるだろう。
忘れてはいけないのが、周りの社員やスタッフたちも同時に育成していくことだ。最近では、後継者と若手社員を集めて研修やセミナーを受けさせる会社も増えている。また、事業承継に関して気になっていても、周りは社長に気を使って突っ込んで聞けない雰囲気がある。できる限り情報をオープンにし、社長交代に対しての疑念や良からぬ臆測を抱かせない工夫も必要だ。