急いで走るも、のんびり走るも
すべてはドライバーの望むまま

 最も驚かされたのがブレーキングスタビリティの高さだ。280km/hからフルブレーキングを試みても、ステアリングを修正する必要はほぼ認められなかった。これは750Sの優れた空力特性によるところが大きいと思われる。

 サーキット走行ではパワートレーンの進化もしっかりと体験できた。750psを発揮する4L・V8ツインターボは絶品である。とりわけ5000rpmオーバーの領域で、野獣が急に牙をむきだしたかのような痛烈な加速を示すあたりは、720Sでは到底経験できなかったもの。これには、ファイナルギアを15%落としたことも利いているはずだ。

 そんな750Sで走る公道のワインディングロードが楽しくないわけがない。路面からのインフォメーションは実に豊富。正確でクイックなステアリングを操ってコーナーを駆け抜けていると、全身が無上の喜びに包まれていく。しかも、イタリア系スーパースポーツと異なり、渋滞に巻き込まれたらペースを落として走ることだって苦にならない。つまり、急いで走るも、のんびり走るも、すべてはドライバーの望むまま。クルマがドライバーをせき立てるようなことは皆無。こういった特性はイギリス車に多く見られるもの。750SにもそのDNAはしっかりと引き継がれていたのである。

 操作系が見直され、建て付けが大幅に改善されたインテリアも750Sの魅力の一部。マクラーレン・オートモーティブが設立されてから12年間の歩みが、この1台にしっかりと凝縮されているような仕上がりだった。

(CAR and DRIVER編集部 報告/大谷達也 写真/McLaren+山上博也)

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