パンデミック当初の医療費は
原則的に患者の自己負担なしだった

 2019年12月、中国・湖北省武漢で原因不明の肺炎患者が確認された。年が明けた2020年1月14日、世界保健機関(WHO)は、この肺炎患者から新型のウイルスが検出されたことを発表。SARS-CoV-2と名付けられたこのウイルスは、瞬く間に感染爆発を起こし、世界中を大混乱に陥れていった。

 日本では、まん延防止のために、2020年2月1日に「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」に基づいて、COVID-19を「指定感染症」に分類。陽性者の全数把握、入院の勧告・措置、感染拡大防止のための就労制限、建物への立ち入り制限、交通の制限など、「2類感染症」以上の厳しい措置が取られることになった。

 また、COVID-19の治療にかかった医療費の自己負担分については、次のような公的支援が行われ、原則的に患者の自己負担なしで必要な医療が受けられるようになっていた。

「2類相当」での医療費支援(2020年2月1日~2023年5月7日)
・外来(通院)…検査費用や治療費の自己負担分に公費支援が行われていた
・入院…治療費や食事療養費などの自己負担分に公費支援が行われ、原則的に患者の自己負担なし

通院の医療費は、医師が必要だと認めたPCR検査や抗原検査などの検査費用、COVID-19の陽性が判明した後の処置、医薬品などは、全額公費負担の対象で、自己負担分が無料になっていた(ただし、COVID-19かどうかの判定前にかかる初診料などは公費負担の対象外)。

入院の医療費は、治療にかかった検査、医薬品、医学的処置、入院費などは、原則的に全額公費負担。ただし、高所得層に対しては、一定の負担を設定している自治体もある。

 指定感染症の準用期間は1年間だが、COVID-19の感染拡大は一向に収束の気配を見せることはなかった。そのため、期限を定めずに必要な対策を取れるようにするために、2021年2月13日に感染症法上の位置付けを「新型インフルエンザ等感染症」に変更。「2類相当」の厳しい措置が続けられ、医療費を原則無料とする公的支援も継続された。

 その後、感染者が急増するなど、先の見えないコロナ禍が続いたが、2022年秋頃から重症化する人や死亡する人の割合は低下するようになる。また、早期の正常化を求める経済界の意向もあり、2023年1月、COVID-19の感染症法上の位置づけが見直されることになった。

 そして、ゴールデンウイーク明けの2023年5月8日から、それまでの「2類相当」から、季節性インフルエンザや肺炎球菌などと同じ「5類感染症」に引き下げられ、医療費に対する公的支援のあり方も見直されることになった。