公安は動くのか?

 今回の「ロゴ問題」が、本当に中国の影響力の下に発生した事案なのかは定かではありません。しかし、ここまで大きな騒ぎになってしまった以上、公安としては動かざるを得ません。具体的には、大林氏に対するバックグラウンドチェックをしていると思います。警察庁から47都道府県に命令が出て、過去の経歴などを洗い出そうとするはずです。
 
 過去には池袋のパスポートセンターで、中国籍の従業員が1900人分の個人情報を流出させるという事件も発生しています(NHK 2023年11月24日付)。この者が中国のスパイだったかどうか定かではありません。しかし、情報が中国側に盗まれたり、中国側に有利な情報が政治の意思決定の場に持ち込まれることを、現行の法律で防ぐことはできない状態に日本はあります。この事件の被疑者も書類送検のみで、逮捕はされていません。

 昨今、話題になっている「セキュリティクリアランス」法案ですが、私はこの中に国籍の条項を設けたほうがいいと思います。現に自衛官や警察官は日本国籍の人でないとなれません。同じように、国の政策立案や生活インフラなどに関わる重要な情報を扱える人の国籍に制限を設けるというのも有効な手段になりうると思います。
 
 もちろん、日本国籍の人でも反体制組織に所属していたり、弱みを握られていたりして他国の諜報活動に加担してる人もいますから、国籍を制限するだけで完全に他国からの影響を排除できるわけではありません。しかし、制限を設けることで他国から直接送られてくるスパイの影響を事前に防ぐことができます。したがって、国籍でスクリーニングをかけた後に、さらにその人の経歴を綿密に調べてポジションや権限を与えていくという仕組みが望ましいでしょう。

 国の根幹や治安維持に関わる重要なポストや情報にアクセスできる権利は、制限されて然るべきです。スパイを取り締まってきた元公安という立場からは、懸念点について国会で議論を尽くしたうえで、スパイ行為を未然に防ぐことができる内容と運用の仕組みを備えた法律が制定されることを期待してします現在の法律では、今回のような介入の可能性を防ぐ法的な制約はゼロであるということを強調しておきたいです。