わが子の塾選びに悩む親は多い。つい塾の広告に躍る難関校の合格実績から判断しがちだ。しかし、子どもの学力や志望校を鑑みて、その塾が最適とは限らない。「難関校よりも中堅校に強い」「特定の中学校に強い」など、塾それぞれに強みがあるからだ。そこで、特集『わが子に最強の中高一貫校&塾&小学校』(全46回)の#17では、関西と東海の主要20塾について、直近2024年入試を含めた過去15年分の合格実績を大分析。塾業界の優勝劣敗と共に、子どもの学力を伸ばせる塾の「合格力」を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)
関西・東海主要塾の合格力を徹底分析
浜学園が「グランドスラム」達成!
「グランドスラムを達成した浜学園の独り勝ち」――。西の一大中学受験市場、関西。その2024年入試を巡る塾の戦いをそう評するのは、関西の中学受験塾幹部だ。
それもそのはず。グランドスラムとは、灘中を頂点とした、洛南、洛星、東大寺学園、西大和学園、大阪星光学院、四天王寺、甲陽学院、神戸女学院の関西難関9校全てで合格者数ナンバーワンを達成したことを意味するからだ。
しかも、24年入試で20年連続39回目の日本一の合格者数となった浜学園の灘の合格者数111人(23年は92人)は過去最高。さらに灘に次ぐ関西2番手の筆頭格、東大寺学園の158人も過去最高だ。それだけではない。人気が高まるばかりの高槻も265人と過去最高をたたき出した。
「ふたを開けるまでは不安だったが、子どもたちがよく頑張ってくれたというのが正直な感想だ」と浜学園の松本茂学園長は言う。絶好調の浜学園だが、その裏にあるのは、馬渕教室(運営はウィルウェイ)の失速という敵失だ。
関西の大手中学受験塾を巡る構図は、少し前まで難関校の合格実績で王者・浜学園に馬渕がどこまで迫れるかというものだった。
21年に馬渕は関西の中学受験の天王山、灘に71人の合格者を出すなど破竹の勢いだったが、それをピークに昨年は60人、そして24年は58人へとさらに減らした。しかも、この数字の一部には、早稲田アカデミーグループの難関校特化型の塾、SPICA(スピカ。東京都)の「灘中合格対策平日講座」を受講する受験生が含まれるというのが、東西の塾関係者の共通見解だ。
失速の原因は、馬渕がより市場の大きい高校受験へシフトしたことと、馬渕の中学受験部門躍進の立役者だった吉田努氏が21年半ばにライバル塾のアップ教育企画に電撃移籍したことにある、というのが関西塾関係者の共通認識だ。「馬渕の失速で、このまま浜学園の1強時代になりかねない」と関西の塾関係者は口をそろえる。
次ページでは、ここまでの最新事情を踏まえて、24年入試における関西と東海エリアの主要塾の合格校の平均偏差値を求めた「主要塾の『合格力』ランキング」を見る。実は、「グランドスラム」を達成した浜学園はトップではない。トップに輝いた意外な塾名を明らかにする。
さらに、関西・東海エリアの主要23塾がどのレベルの中高一貫校にどれだけの合格者を出しているかを算出した「学校偏差値ランク別合格者ウェート」、「合格力と塾の規模の相関図」「有名中高一貫校における主要塾の合格者数」など、いずれも塾選びにきっと役立つ八つの図表を一挙掲載する。
塾最新情報と、これらの図版にわが子の学力や志望校を当てはめて考えていけば、子どもと塾の致命的なミスマッチは起きにくくなるはずだ(首都圏編は、4月15日(月)配信の本特集#15『中学受験塾「合格力」ランキング【首都圏18塾・2025入試版】2位エルカミノ、1位は?過去15年の実績大分析!』参照)。