近藤 僕は経営者には3つ必要な力があると思っていて、「知識」と「経験」と「勘」なんですよね。ただ、僕もそうだけど、起業するとき、何かを新しく始めるときには「知識」と「経験」がないわけです。

井上 勢いだから。

近藤 そう、だから一番大事なのは「勘」なんですよ。その「勘力」がズバ抜けて優れてるんですよ、孫さんは。

【全文公開】孫正義のスカウトメールに学ぶ「人を動かす伝え方」井上篤夫氏 Photo by Motoyuki Ishibashi

井上 おっしゃる通り。

近藤 ただ、周りは「何言ってんの、この人頭がおかしくなったんちゃうか」みたいな(笑)。スケールのレベルが違いすぎるから、僕も最初はそうでしたが、ビックリするんです。

井上 1ケタ、2ケタ違うから。

近藤 その勘力がどこからくるのか、僕みたいな凡人には正直わからないんですけど、たとえば僕が携帯電話の販売を始めたときに、周りのおじさんはみんな「携帯電話はまだ普及しない」と言ってたんですね。基本料金が高いし通話料金が高いから。それで僕は0円にしたら持つと思ったんですよ。使わなくてもいいと。持ってることがステータスなんだというイマジネーションが湧いたんですね。

 孫さんの場合は、そのはるか光年先ぐらいのイマジネーションができるんだと思います。未来のそのすごい先まで、視覚的なイメージが思考の中であるのでしょう。確信はなくても、こうなるはずだみたいな最終的なイメージが。僕も携帯電話などの経験があるから、孫さんのブロードバンド革命も僕は信じて聞いてたんですよ。先を見通す勘力のレベルは違うけれども。

井上 ジャック・マーと会ったときに即断即決で投資を決めたときの話を聞いたんです。何でできたんですかと尋ねたら、動物的勘だと。

近藤 僕もそう思います。

井上 同じ動物のニオイがすると。「同志的結合」という言葉を孫さんはよく使うけれど、同じニオイのする人間と、俺は「同じ志」で戦いたいっていうことを言われています。孫さんは、近藤さんに同じ動物のニオイと「志」を感じたんだと思います。言葉は悪いけど、あいつに営業をやらせたら絶対いけると。

近藤 それは絶対にそう思ったと思います。光栄なことです。