女性は、ネットワークを意識的に増やすことも大切
女性が自らの意志でキャリアパスから脱落していく「水漏れパイプライン」と呼ばれる現象も指摘されるが、その原因のひとつが「働きがいを感じたことがない」というもの――これを改善していくためにも、少し先を歩いているメンターの存在が必要になってくる。
池原 メンターは、成功も失敗も含めて経験値が高く、人によっては管理職の経験もあるので、リーダーとしての視点を持っています。なので、「働きがい」ということに関しては、実感をもって伝えることができるでしょう。想像すらできないものに挑戦しろと言われて躊躇するのは当然ですが、経験者が目の前にいると「自分にもできる!」というイメージを持てます。
最近、私がうれしかったのは、半年間のメンタリングが終了したメンティのなかに、「メンタリングを受けた後、自分から手を挙げて昇格しました。そして、いつか、私もメンターになりたいと思いました」という方がいたことです。メンターとメンティという関係性が循環していくのは素晴らしいことだと思います。
男性は、プライベートでも、仕事関連の人脈のなかで飲みに出かけたり、ゴルフをしたりという「オールド・ボーイズネットワーク」を形成していることがある。一方、女性の場合は、仕事が終われば子どもの学校や地域とのつながりのなかで別の役割を担わなければならないことが多い。プライベートでメンターに出会える機会は少ないように思えるが……。
池原 私は、女性のキャリアに必要なものは、ロールモデルとネットワークだと思っています。ジェンダーによるネットワーク分析によると(*2)、男性のネットワークは仕事とプライベートが割と融合しています。それに対して、女性は仕事とプライベートが結びついていない方が多いようです。これは良し悪しの話ではありません。ただ、女性の場合は、仕事とプライベートのネットワークがはっきり分かれているので、それぞれのネットワークが小さくなる傾向もあります。そのため、より意識的にネットワークをつくっていくことが求められます。
*2 THE GENDER OF SOCIAL CAPITAL, Ronald S. Burt,10 (1), 5-46, 1998.
勤務する会社がメンターとのマッチングを行っていたり、上司によるキャリア1on1を実施したりしていればよいが、そうした環境になければ、自分にふさわしいメンターを自力で見つけなければならないだろう。
池原 いまは、女性同士が職場を越えて出会うことのできるコミュニティが増えてきています。何かの勉強会に参加するのもいいでしょうし、“昼スナ”の愛称で、巷で人気の「昼スナック」などに行ってみるのもいいかもしれません。どのようなタイプの人と出会いたいのかを考えれば、どのような場に出向けばいいのかがある程度はわかります。多様な人と出会うなかで、「この人、素敵だな」と思ったら、お茶にでも誘って、人生の話を聞いてみるのもありだと思います。それがメンタリングにつながりますから。また、メンターは、すべてが自分の人生にしっくりくる人でなくてもいいのです。パーツモデルといって、子育てはこの人、働き方はこの人、というふうに、人生のそれぞれの側面について参考にできる人に出会えればいいのではないでしょうか。