なぜ岸田政権は「大企業中心主義」にとらわれるのか

 さて、このように「大企業が賃上げしたら中小企業も賃上げできる」という考え方がいかにトンチンカンなのかということをわかっていただくと、みなさんは不思議に思うことだろう。

 政府には頭のいいエリートが山ほどいる。データを見てちょっと冷静に考えれば、全体の0.3%に過ぎない大企業が賃上げして、99.7%の中小企業に波及をさせるなんて話が荒唐無稽だということはすぐにわかる。この30年、先進国で日本だけ平均給与が上がっていないという現実からも疑いようがない。

 にもかかわらず、なぜ岸田政権は「大企業中心主義」にとらわれているのか。

 まず、身も蓋もない話をすると、ひとつには「自民党の選挙対策」ということも大きい。

 大企業を中心に構成される経団連は、毎年秋になると、「社会貢献の一環」として約1700の会員企業・団体に、与党(自民党)に献金を促す。そして、自民党は選挙でも大企業の組織力をあてにしている部分がある。

 だから、自民党は露骨に大企業を優遇をする。例えば、岸田政権は大企業に対して「賃上げ」で協力をしてもらう代わりに、「賃上げ減税」という優遇措置をした。中小企業のほとんどは赤字企業で法人税を払っていないので、恩恵はない。つまり、これも「大企業中心主義」を体現した政策ということだ。

 しかも、「大企業中心主義」のメリットには、国民に対して“やってます感”を出したアピールができるということもある。

 実はこれまで説明した「大企業中心主義」にとらわれているというのは、岸田政権だけではなく、マスコミ、そして我々国民にも当てはまることではないか。