彼は大蔵省に入省し、財務省関税局長を務めた財務官僚だが、和歌山県警本部長を務めた経歴を持つ。常務として迎えられた後、4年後に社長になり10年間社長を務めた。

 セコムと比較すると、綜合警備保障は、創始者とその子が警察官僚であるとともに、警察官僚を積極的に役員として迎え入れており、警察官僚や県警本部長経験者が社長を務めてきたという特徴がある。

 2006年に駐車監視業務(駐車違反などの取り締まり)が民営化された際、綜合警備保障は東京都内の数か所の警察署管内を請け負った。しかし、その後は引き受けているようには見えない。

 受託は入札制度によっており、2人の巡視員による巡回の仕事で、人件費がかかり、利益が上がらないため撤退したものと推定される。

 一方セコムは、人を張り付けたり、巡回させたり、常駐させたりする警備から手を引き、CCTVなどの機械監視へと舵を切った。さらにセンサーを組み込んだり、入退室管理と連動させたりして、異常通報があった場合にのみ警備員が駆け付ける、という省力化した機械警備を発展させようとしている。

 そのため、こうした原初的な手間暇がかかって儲からない駐車違反取り締まり業務には見向きもしなかったものと考えられる。

 じつは、この駐車監視業務の民間移管は、その企画が発表された当初から、大量に定年退職する警察官の再雇用先を確保するためではないかと言われていた。

 あえて言うならば、落札した企業は、儲けるためではなく、退職警察官を救済するために儲からない仕事を受託したという、逆説的な見方も可能と思われる。