また、警備業界の警察キャリアの受け入れも顕著である。警備会社の最大手はセコムで、2022年度では、警察庁長官官房付を本社の顧問に、県警察学校長をその県を含む地方本部の顧問に迎え入れている。前年には、北海道警察の参事官をセコムの北海道本部の顧問に迎えている。

 現在、取締役に警察関係者はおらず、監事に元警視総監がいる。この元警視総監は、JAF会長及び全日本指定自動車教習所協会連合会代表理事、保険相互会社嘱託、さらにパチスロなどのゲーム機メーカーのコナミの監査役も務めており、警察が利権を持つとされる交通、防犯、風俗という3領域すべてで役職を得たと言うことができよう。

 警備業界の第2位は、綜合警備保障(ALSOK)である。警備会社は全国に1万社以上あると思われるが、セコムと綜合警備保障だけで売り上げの4割以上を占めると言われている。業界第1位のセコムの売上高は1兆円を超え、業界第2位の綜合警備保障の売上高は約5,000億円である。これに対して、3位であるセントラル警備保障は約700億円にすぎない。

 綜合警備保障は、そもそも警察官僚によって創設された会社である。創始者の村井順は、「内閣総理大臣官房調査室」を設立し、1964年に東京オリンピック組織委員会事務局へ次長として出向したおりに、今後の警備会社の需要と発展を実感したという。警察庁九州管区警察局長で退職したのち警備会社を興した。

 長男が社長を継いだのち、中部管区警察局長で退職した警察官僚が迎えられ、社長を約6年務めた。

 なお、この社長となった警察官僚の弟も警察官僚で、警察庁長官の後に内閣官房副長官になった。

駐車監視業務の民間委託は
警察官の再雇用先確保のため?

 綜合警備保障と警察庁との契約に関して、兄弟の関係がマスメディアの話題になったこともあった。

 じつは、創設者の次男も警察官僚であった。複数の県警本部長を務めたのち中部管区警察局長で退職し、預金保険機構理事を1年務めた後、綜合警備保障へ入社し、社長に就いた。この社長が招いた官僚が次の社長になった。