疑問3
ビジネスとしてはどこが新しいのか?
ここまで利用者の観点でコンビニデリバリーについて解説してみましたが、ビジネスの観点でみるとコンビニデリバリーはどこが新しいのでしょうか?
利用者の視点でみればコンビニデリバリーは5割増ぐらいの価格を払うことで買い物の手間を省くことができるサービスです。
いわゆるタイパ重視の消費者は一定数います。そもそもコンビニ自体が多少高くても利便性を求める消費者を対象にしているわけで、その中でもさらに少数のタイパを求める消費者にはサービス自体はマッチしているのです。
一方でビジネスの視点でみれば、本当は5割増以内のコスト増でこのサービスを提供すること自体が難しい。実はコンビニデリバリーは、難易度が高い3つのイノベーションに支えられた新ビジネスなのです。
ひとつめが店頭在庫のリアルタイム予測です。
コンビニの棚ですから(万引きをのぞいて)、今、棚にどの商品があるかは基本的に把握はできています。しかし注文と同時におにぎりは売れてしまうかもしれません。私の経験でも、最近ローソンでおにぎりやサンドイッチの棚を眺めていると店員さんが物凄いスピードで商品を持ち去っていくことが増えました。
ローソンのデリバリー事業を例に話をすると、彼らが目指しているものは店頭の在庫を近隣の消費者に届けるサービスです。
ウーバーイーツのアプリで商品在庫を表示して、それをデリバリーのユーザーが注文して、店頭で店員がそれを瞬速で確保するまでに商品が売れてしまわないようなところまで店頭在庫予測が深まらないとこのサービスは成立しません。
そのために(これはまだ道半ばかもしれませんが)従来型のITに加えてAIによる予測が加わっていく必要があります。先日、ローソンはKDDIの子会社になる方針を発表しましたが、これらの要素はまさしくKDDIのようなIT企業の力が加わらないと完成しない要素です。
ふたつめがセルフレジなどのDXです。これはセブンとローソンで若干考え方が違うように感じる部分ではあるのですが、ローソンの場合、最近では店員さんがレジに入っていない時間が増えているように感じます。
コンビニデリバリーを本格的に事業化するとなると、実は店内のオペレーションが微妙に複線化します。レジでの会計をさばくオペレーションと、店頭在庫からデリバリー商品をピックアップするオペレーションの2つに仕事が分かれるのです。
これを両立させるためには従業員をレジからなるべく離れさせることができるようにビジネスモデルを設計する必要があります。これもまだ道半ばとは思いますが、その具体的な鍵はセルフレジの稼働率向上だということです。