ENEOSホールディングス次期社長の宮田知秀氏(右)、ENEOS次期社長の山口敦治氏ENEOSホールディングス次期社長の宮田知秀氏(右)、ENEOS次期社長の山口敦治氏 Photo by Masataka Tsuchimoto, Bloomberg/gettyimages

ある意味、サプライズのない結論となった石油元売り最大手、ENEOSホールディングス(HD)のトップ人事。旧日本石油出身者のトップが2代続けてセクハラで辞任したことを受け、同社は旧東燃ゼネラル石油出身の宮田知秀氏を4月、次期社長に充てると発表した。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、社会的評価が「崖っぷち」ENEOS HDの次期社長にはどのような人物が浮上したのか、また主要子会社で起きたサプライズ人事などをレポートする。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

旧東燃出身の宮田社長代行が
そのまま次期社長就任へ

 主流派が自ら墓穴を掘った末、巨大企業で非主流派の“下剋上”が起きた。

 石油元売り最大手のENEOSホールディングスは2月28日、セクハラに起因する斉藤猛前社長の解任で不在となっていた社長職に4月、宮田知秀代表取締役(58歳)を充てる人事を発表した。

 ENEOSホールディングスの歴史を一言で言えば、日本石油(日石)が競合他社を次々とのみ込んできた歴史である。それ故に日石出身者が社内の主流派だ。

 しかし宮田氏は2017年に経営統合した東燃ゼネラル石油(東燃)の出身で、すなわち社内で非主流派である。「杉森務会長CEO(最高経営責任者)、そして斉藤社長。日石出身者のまさかの2代続けてのセクハラによる辞任がなければ、宮田氏は社長候補のうわさにも上がらなかった人物」(ある石油元売り関係者)だ。その観点に立てば、今回の人事はサプライズではある。さらに杉森・斉藤両氏は販売系だったが、宮田氏は工学系だ。

 ただし自滅する代表取締役たちの中で唯一“生き残っていた”宮田氏は、斉藤氏が辞任した昨年12月から社長代行を務めており、大きなサプライズ人事ではなかったようにもみえる。なお選任理由として同社は、「『確固たる倫理観』をもって『古い慣習を刷新』できる人材」などとしており、宮田氏も28日の記者会見で「(セクハラなど)一切起こしません、とここで宣言します」と強調した。

 さて巨大企業の社長レースでは、最終的には宮田氏に落ち着いたものの、どのような人物が他にも浮上していたのか。また、主要子会社のトップ人事でも起きたサプライズについても明らかにする。