2023年に大阪港湾部での国産e-メタン大規模製造検討開始の会見を開いた大阪ガスの宮川正副社長(当時、写真右)とENEOSホールディングスおよびENEOSの宮田知秀副社長(当時)2023年に大阪港湾部での国産e-メタン大規模製造検討開始の会見を開いた大阪ガスの宮川正副社長(当時、写真右)とENEOSホールディングスおよびENEOSの宮田知秀副社長(当時) 写真提供:大阪ガス

最近、「GX」という言葉をよく耳にする。GXとはグリーントランスフォーメーションの略称であり、経済産業省によれば、「化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動」のことである。実は国内のGX拠点整備を巡って地域間や企業間の競争が激化している。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、国内8カ所のGX拠点を巡る動きを徹底解説する。(国際大学学長 橘川武郎)

GXで政府支援を獲得するため
地域・企業間の競争激化

 岸田文雄内閣が2023年2月に閣議決定した「GX実現に向けた基本方針」は、「今後10年間で150兆円超の官民投資」を喚起することをうたう。そして、そのためのトリガーとして、GX経済移行債(国債)の発行で得る資金を財源に、20兆円規模の先行投資支援を実施する方針を打ち出した。今、日本では、この政府支援を獲得するための地域間競争や企業間競争が激化している。

 競争激化の背景には、経済産業省が、22年10月に、水素・アンモニア・合成燃料のサプライチェーン構築に関して、向こう10年間に、大都市圏を中心に3カ所程度の大規模拠点と、地域を分散して5カ所程度の中規模拠点とを重点的に整備する方針を打ち出したことがある。

 同省は、24年1月には、24年夏に拠点整備の申請受付を開始し、24年中に案件採択の公表を始めると発表した。水素・アンモニア・合成燃料は、GXで活用する「クリーンなエネルギー」の代表格とされているから、各地域、各企業は、この「3+5カ所」の拠点選択レースに乗り遅れないよう、必死なのである。

 大規模拠点3カ所を巡るレースの先頭に立つのは、川崎と横浜からなる京浜地区である。