「実年齢よりも老けて見える60代の患者さんに食生活を尋ねると、明らかにたんぱく質不足であることがわかりました。皮膚にシワが目立っていたり、体全体がしぼんだような印象を受けたり、見た目年齢が高い患者さんは、栄養バランスが悪く、とりわけたんぱく質が足りていなかったのです」
高齢になると食が細くなり、栄養は不足しがちになる。その上、昨今の健康ブームによって、ヘルシーな食生活を意識しすぎると、必要な栄養価が足りなくなってしまうのだ。
「粗食にしたほうが健康に良い、と考える人も少なくありませんが、実は見た目年齢に『粗食』は逆効果な場合もあります。ここで言う粗食とは、朝はご飯に味噌汁、納豆、漬け物。昼は蕎麦かうどん、夜は焼き魚と野菜の煮物のようなイメージです。こうした食生活が『健康によい』と信じている人も多いと思いますが、粗食を続けると、見た目年齢を上げることに繋がる可能性があるのです」
上に挙げたようなメニューは、一見するとヘルシーで栄養バランスも整っているように感じるが、たんぱく質が圧倒的に不足しているのだと和田氏は言う。
「コレステロールや血圧を気にして、極端に減塩したりカロリー制限をしたりと、数値にこだわりすぎると『見た目年齢』が上がってしまいます。コレステロールは動脈硬化などの原因になると避けられがちですが、実は体にはなくてはならない物質。免疫細胞を作る材料になるので、無理に下げると免疫力が低下し、病気にもなりやすくなります。健康を意識することも重要ですが、たまにはステーキを食べるとか、自分の好きなものを我慢せずに食べることが、若々しさを保てる秘訣なんです。特に老けたくないなら、肉は積極的に食べたほうが良いでしょう」
食生活だけでなく、男性を老けさせる大きな要因には、年齢とともに社会との接点が薄くなっていくことも関係しているようだ。
「定年退職した途端、一気に元気が無くなって老けてしまった…という話は、よく聞きますよね。老けを加速させないためには、男性ホルモンを減少させないことも重要です。特に男性は仕事がなくなると、社会との繋がりや出世欲、性欲などを一気に失ってしまうパターンが少なくない。仕事をしていないと人と会う機会そのものが減るので、身なりにも気を使わなくなります。こうなると若返る必要性すら感じなくなり、一気に見た目年齢は年老いてしまいます」
定年後の“家に引きこもり状態”は、老化を防ぐためにも絶対に避けるべきだと和田氏は指摘する。
「家に閉じこもっていると、人に会うことがどんどん億劫になり、日々の意欲自体も衰えます。ジムや散歩すら行かなくなり、刺激がないので脳は衰え、外見だけでなく脳の老化も進んでしまうという悪循環に陥るのです」