いつまでも健康で長生きしたいと誰しも願う。では、そのためにどんな具体的なアクションが必要なのだろうか。最新の生命科学に詳しい専門家が語るには、まずはタンパク質だという。肉体をすっくと支える筋肉がタンパク質で構成されていることを考えれば、たしかに当然なのかもしれない。※本稿は、石浦章一『70歳までに脳とからだを健康にする科学』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。
老いて筋肉を維持するためには
良質なタンパク質を毎日摂るべし
この記事のテーマは、長寿とそれに必要なタンパク質摂取の話です。なぜ、タンパク質が大切かというと、大部分タンパク質でできている筋肉が足りないと寝たきりになる可能性が非常に高いためです。高齢者になっても筋肉を付けることが必要なのです。それにはどういう形でタンパク質を食べないといけないのか、その食べるタンパク質の話をします。
私たちのからだはいろいろなものでできています。水が半分以上を占めていて、その次に多いのがタンパク質です。その他には、脂肪や糖分もあります。「タンパク質」と書くのは私たち生化学者で、栄養学では「たんぱく質」、医学では「蛋白質」を使うことが多く、厚生労働省では「たんぱく質」が使われています。本当にどちらでもいい話ですが、専門用語にはこのようなものが多く、「筋線維」(医学)と「筋繊維」(理学)など用語が統一されていないことも多いのです。もちろん、狭い村社会同士の意地の張り合いのためです。カッコつけて「プロテイン」と英語読みするのは、筋肉をつけるための栄養剤メーカーが使っている呼び名です。
タンパク質は、私たちのからだを作る構成成分で、筋肉がその代表です。髪の毛、目、腱、皮膚、爪、骨などもタンパク質でできています。またこの他に、からだの中の化学反応をつかさどる酵素もタンパク質です。発酵食品で使われている「○○酵素」というのは、だいたいアミノ酸のことですから間違いないように。
タンパク質はアミノ酸が長く連なったものの名称です。別名ポリペプチドとも言います。アミノ酸の数が50個以下くらいのものを通常ペプチドと呼びます。数個から10個くらいの小さなものをオリゴペプチドと呼ぶ場合もあります。それらがバラバラになって1個1個になると、アミノ酸と呼ばれます。
そこで、タンパク質はどのように作られて分解されているか、ご紹介します。食べ物、例えば牛肉を食べたとします。牛肉のタンパク質は、消化管の中でいろいろな酵素によって消化されて、最後にアミノ酸になります。胃ではペプシンという酵素によって、その後、腸へ運ばれますと、すい臓から分泌されるトリプシンとかキモトリプシンという酵素によって分解されてだんだん小さくなっていき、最後に腸でペプチダーゼという酵素によりアミノ酸に変換されます。作られたアミノ酸は小腸から吸収されて、栄養分として肝臓に蓄えられるのです。