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食事のあと、お腹はいっぱいなのに「なんとなくもの足りない」と感じ、つまみやお菓子に手が伸びることはないだろうか。このとき、カロリーは十分摂っているはずだが「何か」が足りていないのだ。その何かとは、おそらく「タンパク質」である。
本書によると、昆虫も動物も人間も、ある一定のタンパク質量を摂取するまで食べ続けてしまうのだという。タンパク質量が足りていないと、それが満たされるまで食べ続けるため、カロリー超過となるケースもあるそうだ。
では、タンパク質だけ摂ればいいのかといえば、そうではない。炭水化物が少ないと寿命を縮めてしまうからだ。しかも、タンパク質の摂取量が過度に増えると、寿命や生殖にも悪い影響を及ぼすという。あくまで必要なのは「適正な量のタンパク質」なのである。
本書は、科学者である著者たちが自ら行った実験と研究を通して導き出された結果をもとに、生物と食欲の関係性を解き明かしたエキサイティングな一冊だ。実験対象はバッタ、コオロギ、ショウジョウバエ、ヒヒ、人間など多岐にわたる。生物が生まれ持った本能的な「食欲」は、私たちが想像する以上に完璧で、生存に基づいてプログラミングされていることに驚かされる。
本書はエビデンスに基づいたノンフィクションでありながら、謎を1つずつ解き明かす推理小説のようなワクワク感がある。「食欲」にまつわる壮大なストーリーを楽しんでほしい。(矢羽野晶子)