NTTドコモとメドレーが10月、総額44億円で共同買収したのがオンライン薬局を展開するミナカラだ。8月からファミリーマートでの薬の受け取りサービスも始めた。業界の“風雲児”はどんな薬局の未来を描くのか。特集『薬剤師31万人 薬局6万店の大淘汰』(全13回)の#8では、ミナカラ創業者の喜納信也取締役を直撃した。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
薬局の体験はほとんど変わっていない
病気の前から治るまで患者とつながり続ける
――薬剤師を志したきっかけは何でしょうか。
実は家族に医療従事者はいません。ですが、両親に「医療系に行け」と言われて育った影響が大きいですね。大学を選ぶ際に、社会貢献ができて人の役に立つ仕事がしたいと医療系に進もうと決め、受験科目などから自分が目指せる医療系の“頂点”が薬学部だったのです。
ただし、在学中は薬剤師へのモチベーションはそれほど高くなかった。他学部の学生と交流したり、ベンチャー企業のチームラボでインターンをしたりしていました。
就職は悩みました。ベンチャーに勤めた方が明らかに楽しい。ですが、入れそうな医療系のベンチャーがなかった。ITベンダーに就職してコンサルティング業務などを担当したのですが、やっぱり医療系の世界への思いが強まった。医学部再受験も検討しましたけれど、それはそれで時間がかかる。今回の人生は「薬剤師×ビジネス」で生きていこうと決心し、まずは夜間に調剤薬局でダブルワーク。その後、ビジネススクールに通い、修了とともにミナカラを創業しました。
――オンライン薬局に取り組む理由は。
患者の立場で考えてみると、これまでの人生で薬局での“体験”はほとんど変わっていないんじゃないでしょうか。私たちの生活はこの20年でどんどん便利になりました。ですが、薬局は何も変わらない。そして、薬剤師の働き方も変わらない。
薬剤師としてこの状況を変えたい。新しい医療体験や医療の仕組みを作りたいと取り組んできました。多くの医療系ベンチャーは「B2B」向けのサービスが中心ですが、コンシューマ向けのサービスにこだわってきました。
オンライン薬局の一般的な薬局との違いは、薬を渡すだけでなく、薬剤師がいつでも患者をサポートできることです。われわれは病気になる前段階の「未病」から、治るところまで患者さんとつながり続ける。
加えて、店の薬の在庫状況に依存しない、患者にとってベストな選択肢を提供できます。OTC医薬品も含めてオーダーメードに近い体験を提供できるのです。