ホストクラブやアダルトビデオへの注目が「反日」につながる!?
このような「ホストにハマって風俗で働く女性」は実は今、中国や韓国でも注目を集めている。
実は近年、中国や韓国の女性の間でも「日本のホストクラブ」の人気が高まっている関係で、ホストに貢ぐために多くの男性から金をだまし取った「頂き女子りりちゃん」事件が、これらの国でも大きく報じられた。23年末には、中国人女性がホストに金をだまし取られたとSNSに投稿をして、中国で大きな話題にもなった。
つまり、中国や韓国では「海外で売春する日本人女性=ホストにハマって借金を背負った女性=性的搾取された被害者」というイメージが定着しつつあるのだ。これを反日キャンペーンに利用しない手はないだろう。
実際、同じく一部から「女性を性的搾取している」と批判のある日本のアダルトビデオ(AV)に関しては、既にそういうイメージの訴求が始まっている。
実は韓国で「列島の少女たち」が摘発される少し前、日本のAV女優が参加することで話題になっていた「アダルトフェスティバル(2024 KXF The Fashion)」の開催が中止された。
女性団体が「性売買を擁護する文化を拡散させる」と強く反対したことを受けて、ソウル市などの自治体が続々とイベント開催不許可あるいは禁止の意向を表明したからだ。その中で「日本の性的搾取」がやり玉に挙げられている。
「性的搾取」議論は「慰安婦問題」を再燃できる格好のネタ
ここまで言えば、筆者が何を心配しているのかお気づきだろう。
今、海外で増えている「日本人女性の出稼ぎ売春」というのは、日本のアダルトビデオや「ホストにハマって風俗で働く女性」という国内外から「性的搾取の被害者」と批判されるものと容易に結びつけられる。
そして、この「性的搾取の被害者」というのは、中国系や韓国系の市民団体が、世界各国で続けている「慰安婦像設置キャンペーン」を蒸し返す格好のネタでもある。
もし筆者がこれらの国で反日キャンペーンを仕掛ける側だったら、「出稼ぎ売春」をする日本人女性たちが摘発された時に、「日本の性的搾取の被害者を我が国が保護した」というストーリーを国内外に発信するだろう。そして、国際社会に対して、日本という国がいかに人権意識が低く、女性を虐げているのかということを吹聴して「過去を清算していないからだ」とか言って、慰安婦問題を再びフィーチャーする。
「日本の賃金を上げないとヤバいことになる」という主張をしていると、「確かに給料は安いけれど、物価も安いし、安全だし民度も高いのでこんな住みやすい国はない」なんて反論する人たちがいる。
ただ、それは「安いニッポン」の本当に恐ろしさをわかっていない。国民が貧しくなるだけではなく、あらゆる日本人が海外から安く買い叩かれることで、日本人の誇りや尊厳までが踏みにじられてしまうのだ。
テレビにあふれる「日本スゴイ」で現実逃避をしたい気持ちもわかるが、いい加減そろそろ「日本ヤバい」の現実と向き合った方がいい。
(ノンフィクションライター 窪田順生)