JR東日本・西日本・東海・九州の上場4社が2023年度決算を発表した。昨年5月8日に新型コロナウイルス感染症が感染法上の5類に移行し、行動制限がなくなったことで、通勤定期利用を除く鉄道利用はほぼ正常化した。決算内容も、2023年度が事実上の「アフターコロナ元年」とだったことを示しており、今回の決算は「ニューノーマル(新しい常態)」の基準点として見ることができそうだ。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
運輸セグメントの営業損益が
4年ぶりに黒字転換したJR東日本
JR東日本から見ていこう。2023年度の連結営業収益は2兆7301億円で、対前年度13.5%増、対2018年度では90.9%の水準。営業利益は対前年度145.4%増の3451億円で、2018年度の71.2%の水準だった。
運輸セグメントは2022年度に241億円の営業損失だったが、2019年度以来4年ぶりに黒字に転換し、1707億円の営業利益を計上した。とはいえコロナ前の半分の水準である。不動産・ホテル、流通・サービスセグメントはコロナ前から順調に成長しているが、鉄道の穴は大き過ぎる。2024年度通期予想は、営業収益が対前期比1219億円増の2兆8520億円、営業利益は同249億円増の3700億円、経常利益は同184億円増の3150億円とした。
同社は昨年、グループ経営ビジョン「変革2027」の目標年次である2027年度について、営業収益3兆2760億円、営業利益4100億円の数値目標を発表している。不動産・ホテルセグメントは2023年度から約780億円の増収、同約230億円の増益。流通・サービスセグメントは同2744億円の増収、270億円の増益で、ともに2024年度末に第1期開業予定の高輪ゲートウェイ事業が大きく寄与する想定だ。
運輸セグメントの営業収益は2023年度の1兆8536億円から、2027年度は2兆190億円へ1653億円の増収を見込んでいる。だが、ホームドアや自動運転などさまざまな設備投資が控えており、営業利益は1707億円から1780億円の横ばいとした。
JR東日本は「変革2027」で、2027年頃をめどに連結営業収益の運輸、非運輸の割合を、7対3から6対4に変えていくとの基本方針を掲げていた。コロナ禍以降はさらに5対5を目指したいとしていたが、2027年度の目標値は連結営業収益3兆2760億円のうち運輸が2兆190億円、ギリギリ6対4を達成できる計算だ。
もっとも比率の話なので、鉄道が伸び悩めば難易度が下がり、予想以上に回復すれば達成が難しくなる。元々、コロナ禍という特殊な状況を想定して立てられた目標ではないので、数字に一喜一憂しても仕方ないが、利益面では既に変革が起きている。