JR東海・JR西日本・JR九州の
3社の業績は

 続いてJR東海とJR西日本を細かく見てみよう。JR東海の2023年度の連結営業収益は対前年度22.1%増の約1兆7104億円で、2018年度の91.1%の水準まで回復した。営業利益は対前年度62.2%増、対2018年度で85.6%の水準となる6073億円だ。

 鉄道運輸収入は1兆3428億円で、2018年度の1兆3966億円に迫ったが、JR東海単体の営業費は、2020年に開始した「のぞみ」最大毎時12本化など輸送力増強施策の影響で約507億円増加したため、営業利益を押し下げた。2024年度の通期予想は、2023年度からほぼ据え置きとなる連結営業収益1兆7400億円、営業利益6080億円、経常利益5450億円とした。

 東海道新幹線の輸送量は2023年度下期以降、おおむね対2018年度95%の水準で安定しているため、このまま定常化するという見方だろう。もっとも2024年度通期予想の数字は2017年度決算を上回っており、JR東海はコロナ禍を乗り越えたといっても過言ではない。

 数字上、コロナ前に最も近づいているのがJR西日本だ。2023年度の連結営業収益は対前年度17.2%増の1兆6350億円、営業利益は同114.1%増の1797億円。2018年度の連結営業収益は1兆5293億円、営業利益は1969億円だったので、営業収益では上回り、営業利益も91.3%の水準まで戻った。ただし前者は2021年4月の新収益認識基準適用で旅行セグメントの計上方法が変わった影響が大きいため参考値だ。

 対2018年度の鉄道運輸収入は新幹線、在来線定期、在来線定期外のいずれも、JR本州三社のうちもっとも減少率が小さい。JR西日本は2023年度にセグメントを再編しているため単純比較はできないが、運輸セグメントの営業利益は対2018年度84%だった。これに加えて、不動産セグメントが50億円(同114%)、流通セグメントが69億円(同213.1%)増益したことで利益を押し上げた格好だ。

 2024年度の通期予想は、連結営業収益が対前期830億円増の1兆7180億円、営業利益が同97億円減の1700億円、経常利益は118億円減の1555億円とした。セグメント別の営業利益は、運輸が同56億円増の1200億円、不動産が同56億円減の350億円、流通は同10億円減の120億円としている。

 JR西日本単体で見ると、鉄道運輸収入は北陸新幹線延伸開業と需要回復を織り込んで464億円増の8870億円としたが、営業費用は会員サービス「WESTER」関連経費、北陸新幹線の線路使用料などで431億円増の8720億円、営業利益は45億円増の1200億円と予想した。鉄道事業の見通しは本州三社で最も強気である。

 独立独歩のJR九州は、2023年度の連結営業収益が対前年度9.7%増の4204億円、営業利益は同37.2%増の470億円だった。2018年度との比較では、営業収益は95.5%、営業利益は73.7%の水準となる。

 2018年度の連結営業収益(調整後)は、運輸セグメントが約1798億円、非運輸が計約2605億円、営業利益は運輸が274億円、非運輸が計約372億円だった。2023年度の営業収益は運輸が約1589億円、非運輸が計約2614億円、営業利益は運輸が約103億円、非運輸は約378億円となり、運輸事業の減益がそのまま表れている格好だ。この結果、連結営業利益に占める運輸セグメントの割合は、約4割から約2割に低下した。

 ただ2023年度はコロナ禍で先送りした設備修繕を行っており、2024年度の修繕費は72億円の反動減を見込んでいる。その結果、2024年度の鉄道運輸収入は約26億円、対前期1.8%程度の微増ながら、運輸セグメントは46億円の増益となる見込みだ。

 全体の通期予想は、連結営業収益が対前期207億円増の4411億円、営業利益は同103億円増の573億円。運輸以外のセグメントは不動産・ホテルが同36億円、流通・外食が同4億円の増益を見込んでいる。