たとえば、トレーニングをするためにジムへ行くことを考えているとしよう。問題は、それをするだけのモチベーションがわいてこないことだ。トレーニングウェアを用意し、ジムまで行き、トレーニングをして帰宅すると、1時間以上かかる可能性がある。そう考えると、それは非常に面倒な課題だ。

 そこで、「ジムには明日行けばいい」と自分に言い聞かせてしまう。

 しかし、とりあえず10分間だけやってみれば、――たとえばトレーニングウェアを用意してジムに向かう――それを続けるのはずっと簡単になる。勢いをつけることができるからだ。いったんジムに到着したら、ほぼ確実にトレーニングに励むことになる。

 課題について考えるとき、その全体像に圧倒されてはいけない。単に最初のステップに意識を向けるだけでいいのだ。とにかく最初の分だけにフォーカスしよう。

 たとえば、庭の草刈りを先延ばしにしているなら、その作業に要する約1時間について考えてはいけない。草刈り機をガレージから取り出して第一歩を踏み出すだけでいいのだ。

 プレゼンテーションの準備を先延ばしにしているなら、プレゼンテーション全体につい て考えてはいけない。適切なソフトウェアをパソコンにインストールし、プレゼンテーションに必要な資料を集めることにフォーカスしよう。

 職場の片づけを先延ばしにしているなら、そこをごみひとつない完璧な場所にしようと考えてはいけない。職場のごく一部を片づけることにフォーカスしよう。

 言い換えると、とりあえず10分間だけやってみるということだ。いったん始めれば、続けるのがいかに簡単であるかがわかるだろう。

『「先延ばしグセ」が治る21の方法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『「先延ばしグセ」が治る21の方法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
デイモン・ザハリアデス 著、弓場隆 訳

 私がこのテクニックを使うのは、新しい本を書き始めるときだ。白紙のページを文字で埋める作業はとてもきつい。まるで高い山を目の当たりにして絶壁を登る計画を立てるような気分になる。

 そう考えると、書き始めるのは非常に困難になる。だが、とりあえず10分間だけ書いてみると、それを続けるのは難なくできる。

 私の言葉をうのみにする必要はない。ぜひこのテクニックを試してみてほしい。今度もし大きな課題を先延ばしにしていることに気づいたら、その完了に向けて第一歩を踏み出すことにフォーカスしよう。とりあえず10分間だけ取りかかろう。おそらくそれをやり遂げること、少なくともそれに取り組むことが、想像していたよりずっと簡単であることに気づくに違いない。