でっぷりお腹の全裸投稿
風呂ネタ自虐のリスク

 さて、先に書いた通り、中年男性が「超マイナスをそこそこのマイナスへ」を目指して風呂に入るとき、その悲哀と「己が周囲からどう見られがちか」を中年男性自身は自覚している。

 そこでSNSにおいて、中年男性はよく「風呂の鏡の前でたるんだ腹を映す全裸の中年」といったような、自虐ベースのユーモラス投稿をすることがある。滑稽な中年たる自分という存在と、その自分が風呂に入ってみずみずしく生まれ変わろうとする試みのギャップとでもいうべきか、そのちぐはぐさを面白く感じさせることが狙われている、ジョークというほどのしっかりした形は成していないような「おもしろ雰囲気投稿」である(なおそうした投稿の多くは女性を不快に感じさせない程度に配慮されている印象だが、中年男性の風呂の話なんぞははなから1ミリも聞きたくない人も多数いると思われるので、中年男性としては一定程度「攻めた」投稿となる)。

 また、Xには昔から「全裸中年男性」と呼ばれる、ネットミーム的概念的存在がいるので、中年の風呂の投稿と相性がいい(投稿のハードルを下げている)。

 実際筆者もそうした類の投稿を行ったことがあるのだが、今回中年男性の風呂事情についてSNSで調べているうちに、「これはやめた方がいいかもしれない」と思い至った。

 なぜかというと、そうした投稿からは、自分の見え方を気にしながら自虐ネタに興じて周囲の赦しを受けようという姿が垣間見え、これがたまらなくおじさんっぽく感じられるからである。別におじさんっぽく見えるだけならいいのだが、おじさんの卑屈さが前面に出てきているようで、見た人もいたたまれなくなってしまうような代物である。

 しかも、自虐と冒険(人に不快だと思われるリスク)をするわりには面白さのコスパが悪い。

 もしあなたが中年男性で、風呂に関するそうした投稿を検討しているとしたら、潔くやめておくか、とことんまで突き詰めて他の追随を許さない唯一無二の存在を目指すか、いずれかが吉であろう。私はとりあえず、もうしないでおこうと思う。

「風呂キャンセル界隈事情 中年男性編」は上述の通りである。風呂に入るべき理由が切迫しているのが中年男性編の特徴だが、これを中途半端に露悪的に扱うと、周囲に得も言われぬ感想を抱かせることになる。

 キャンセルしにくい中年の風呂ではあるが、楽しく前向きに乗り切っていければ幸いである。