葵祭が終わると、夏はすぐそこです。鮮やかな黄緑色がまぶしい若葉は、夏にかけて深みを増していきます。すがすがしさに満ちているこの時期の「青もみじ」を満喫できるらくたび的お薦めスポットを、東山、洛北、嵐山の3つのコース仕立てでご案内します。(らくたび、ダイヤモンド・ライフ編集部)
1000年の名所「永観堂」と秘境「日向大神宮」
秋の「紅葉」と並ぶ夏の「青もみじ」。これを目当てに京都を訪れる方も年々増えています。まずはクイズから。「イロハモミジ」「オオモミジ」「ヤマモミジ」など、いろいろなモミジがあります。紅葉シーズンになるとよく耳にするこうした「モミジ」と「カエデ」の違い、分かりますか?
実は植物学上、「モミジ」と「カエデ」の区別はありません。「モミジ科」や「モミジ属」は存在せず、全て「カエデ属」に分類されます。では、「モミジ」とは何か。草木が色付く様子を表す古語「もみづ(紅葉づ・黄葉づ)」という自動詞が語源で、転じて赤く色付くカエデを「もみぢ」と呼ぶようになったようです。
それでは、いよいよ「青もみじ」散歩へ。最初は東山に参りましょう。市バス「南禅寺・永観堂道」停留所から徒歩3分の「永観堂(禅林寺)」からスタートします。853(仁寿3)年、空海の弟子である真紹によって真言密教の道場として創建されました(現在は浄土宗西山禅林寺派総本山)。
『古今和歌集』で藤原関雄が、
奥山の岩垣もみぢ散りぬべし 照る日の光見る時なくて
と詠んだように、平安時代から“もみじの永観堂”とたたえられてきた京都随一のもみじの名所で、境内一円が約3000本の鮮やかな「青もみじ」に彩られます。改めて、そのパノラマに感銘を受けました。
総門をくぐるとすぐ「青もみじ」に包まれます。中門で拝観受付を済ませたら、古方丈、釈迦堂、御影堂(大殿)、見る者を深い慈悲で包み込む本尊「みかえり阿弥陀」を祀(まつ)る阿弥陀堂(本堂)など、山側に立ち並ぶ諸堂を回廊伝いに巡りましょう。
釈迦堂前に広がる枯山水庭園、古方丈からのガラス窓越し、斜面に沿ってうねる姿が龍に見える「臥龍廊(がりゅうろう)」など、永観堂ではさまざまな背景と「青もみじ」の共演が見事です。放生池を中心とした庭園の池に映る姿も必見です。
最後に忘れず立ち寄っておきたいのが多宝塔。石段を上がり、息が上がってきた頃、京都市街を一望する絶景が迎えてくれますよ。日が沈む西のかなたに極楽浄土があるという日想観を実感することもできるでしょう。
永観堂の次に向かうのは、秘境的スポット「日向大神宮」です。南禅寺、インクライン南端から琵琶湖疏水に架かる小橋を渡り、山の方へ向かうこと十数分でたどり着きます。
日向大神宮は、平安京が開かれるはるか昔の5世紀後半、第23代顕宗天皇の御代に創建と伝わります。内宮に天照大御神と宗像三女神、外宮に天津彦火瓊瓊杵命(あまつひこほににぎのみこと)と天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)を祀ります。かつては東海道を行く旅人が道中の安全を祈願したり、伊勢神宮の代わりに参拝したりしたことから、「京のお伊勢さん」とも呼ばれました。
一帯には、文化庁により「ふるさと文化財の森」に指定された森が広がります。「青もみじ」の他にも木々が生い茂り、鳥のさえずりを聞きながらの森林浴にぴったりです。外宮と内宮で手を合わせたら、坂道を上がって「天の岩戸」にも立ち寄ってみましょう。くぐることで厄よけ開運のご利益があると伝わります。