世紀の大ベストセラー『源氏物語』をつづった女流作家・紫式部が主人公となった2024年の大河ドラマ『光る君へ』。全54帖にわたる物語のほとんどの舞台であり、紫式部が生まれ育った京の都にはゆかりの場所が点在しています。1000年の時を超えるタイムトリップを一緒に楽しみましょう。(らくたび、ダイヤモンド・ライフ編集部)
『源氏物語』を知り、平安京の中心を訪ねる
昔から女性の読者は多いものの、通読した男性は意外と少ない『源氏物語』。1000年の時を超えて愛されてきた超ロングセラーであり、海を越え、英語、中国語、フランス語、ドイツ語、モンゴル語、ヘブライ語……など30を超える国で翻訳され、広く読み継がれています。今年の大河ドラマを楽しむためにも、まずはどのようなお話なのか、その流れをつかんでおきましょう。
物語の主な舞台は、平安時代中期の宮中。時の帝(桐壺帝)の第二皇子として生まれ、輝くほどの美しさから「光源氏」と呼ばれるようになった貴公子が主人公です。
帝の寵愛を受けた更衣(こうい)である母・桐壺は、光源氏が幼い頃に病で亡くなります。父帝が後妻として迎えた藤壺の女御に母の面影を求め、親しみを抱くようになりますが、次第にそれが恋心へと変わり、父を裏切る禁断の愛へ……。
帝の子という申し分ない身分でイケメン。教養にも優れ、何でもスマートにこなす貴公子は、宮中の姫君たちにとっても憧れの的です。藤壺の女御(にょうご)のほかにも姫君たちと次々に恋愛模様を繰り広げ、主人公が孫の代に変わる最終章の「宇治十帖」まで、全54帖にわたる壮大なストーリーが描かれています。
庶民から見れば雲の上のような宮中の話ではありますが、時代が移ろっても、愛と憎しみ、栄光と挫折、嫉妬、悲しみ……物語に織り込まれるさまざまな心情が、人々に共感を与え続けてきたのかもしれません。
紫式部ゆかりの地を巡るタイムトリップの始まりは、地下鉄東西線「東山」駅から北へ徒歩10分ほど上がった、王朝のみやびを今に見る平安神宮から。平安京を開いた第50代桓武天皇と、京都での最後の天皇となった第121代孝明天皇を祀(まつ)る明治時代創建の神社です。白い玉砂利を囲むように広がる壮麗な社殿は、平安京で天皇が国家儀式を執り行った「朝堂院」を8分の5に縮尺して再現しています。
平安神宮を訪れた人が手を合わせてお参りする正面の拝殿は、朝堂院の中の正殿(大極殿)を表し、二層になった神門「応天門」は、平安京遷都の翌年、朝堂院の正門として建てられた応天門を再現したものです。
平安京の中心であった朝堂院は、平安神宮から4kmほど西にありました。地下鉄東西線「東山」駅から西へ五つ目の「二条」駅で降り、平安京のメインストリート千本通を北に上がること12分ほど。バス停「千本丸太町」の目の前にある内野児童公園あたりに大極殿の跡が。ここにひっそりと立つ石標「大極殿遺址跡」が、平安京の中心の位置を今に伝えています。