夏の祇園祭、秋の時代祭と並ぶ京都三大祭の一つ「葵祭」。約500人、馬36頭、牛4頭、牛車2基、輿1台の行列が緑輝く初夏の都大路を優雅に練り歩くハイライトの「路頭の儀」の他にも、さまざまな神事が営まれます。ゴールデンウイーク(GW)から始まる葵祭の見どころをまとめてご案内しましょう。(らくたび、ダイヤモンド・ライフ編集部)
「葵祭」ってどんなお祭り?
毎年花見の季節の4月上旬に、その年の葵祭の斎王代(さいおうだい)が葵祭行列保存会から発表されます。今年は新選組ゆかりの壬生(みぶ)寺貫主の長女が66代斎王代に。1956(昭和31)年から「路頭の儀」に斎王代・女人列が加えられ、京都にゆかりのある未婚女性から選ばれた斎王代が毎年話題となっています。
葵祭は、賀茂別雷(かもわけいかづち)神社(通称:上賀茂神社)と、賀茂御祖(かもみおや)神社(通称:下鴨神社)を総称する「賀茂社」の例祭で、正式名称を「賀茂祭」といいます。ゴールデンウイーク(GW)中の5月1日から半月間、神事(前儀)が上賀茂と下鴨の両社で行われます。そのハイライトとなるのが15日の「路頭の儀」。平安時代の衣装や小道具を忠実に再現した優美な行列が、京都御所から下鴨神社を経由して上賀茂神社に至る8kmもの道のりを練り歩きます。今年の主な神事と日程は以下の通りです。
【5月】
●1日(水):賀茂競馬足汰式(上賀茂神社)
●3日(金・祝):流鏑馬神事(下鴨神社)
●4日(土・祝):斎王代禊の儀(2024年は下鴨神社)
●5日(日・祝):賀茂競馬(上賀茂神社)/歩射神事(下鴨神社)
●12日(日):御蔭祭(下鴨神社)/御阿礼神事(上賀茂神社)
●15日(水):路頭の儀/社頭の儀(上賀茂神社・下鴨神社)
葵祭の起源は、今から約1500年前、飛鳥に都があった第29代欽明天皇の御世のことと伝わります。風水害によって相次いだ稲の不作の原因が、五穀豊穣をつかさどる賀茂の神の祟(たた)りだとされたことから、馬に鈴を付けて走らせ、祟りを鎮めて豊作を祈願したのが祭りの始まりといわれています。応仁の乱の後、一時中断しましたが、江戸時代の1694(元禄7)年に復興。京都三大祭の中では、最も歴史あるお祭りです。
『源氏物語』の第九帖「葵」にも葵祭のシーンが描かれています。
――賀茂川で斎王が禊(みそぎ)を行なう儀式に勅使として参列する光源氏の晴れ姿を見ようと、身重の体で一条大路に牛車で見物にやってきた正妻の葵の上。そこへ、愛人である六条御息所も偲(しの)びの牛車で見物に訪れます。雑踏の中、牛車を停める場所を巡って葵の上と六条御息所の従者たちが乱闘騒ぎを起こし、六条御息所の乗った牛車が追い払われてしまうのです。誇り高き六条御息所はこれに傷つき、葵の上への恨みが募って生霊となり……。
紫式部のライバル的存在だった清少納言も、著書『枕草子』第五段で「祭のころいとをかし」とつづっています。1000年も昔から、人々が葵祭を特別な神事と捉えていたことが垣間見えますね。
「賀茂祭」は、復興された江戸時代以降、賀茂社の神紋である二葉葵(双葉葵)に桂の小枝を添えた葵桂(あおいかつら・きっけい)で参列する人々の装束や牛車を飾るようになったことから、「葵祭」と呼ばれるようになりました。神紋の「葵」が「あふひ」「逢ふ日」と転じ、また、ハートの形をしていることから、今では縁結びの象徴として親しまれています。