このようなミスリードが起きてしまったのは、マスコミの皆さんが外部講師の研修資料という事実を伏せて、「失言対策」という部分だけを「面白おかしく切り取った」からというのは言うまでもない。

 みなさんは、自分の会社でさまざまな外部講師に来てもらって研修をやるだろう。そのとき、参加できなかった社員のために講演資料を社内で共有することもあるだろう。それが何かのきっかけで社外に漏れて、マスコミが「この会社はこんなマニュアルを作成していたぞ」と大騒ぎをしたらどうか。おそらくシラけた感じで、こんな風にクレームを入れるはずだ。

「いやいや、ちゃんと調べてください。うちが作ったものじゃなくて外部講師の研修資料ですよ、ちゃんと名前も書いてあるでしょ」

 このように世間一般の常識ならば許されることのない「乱暴な切り取り報道」が、政府や自民党の場合はセーフという状況がある。

 なぜかというと、「マスコミ=正義」だからだ。権力の暴走を監視して、不正を正すという社会的意義のあるお仕事をしているマスコミには、「正義を実現するには、多少荒っぽいことをしてもいい」という慢心がある。その荒っぽいことのひとつが、「切り取り」ではないかと思っている。

マスコミ自身が「切り取りだ」と
叩かれないための心得

 そういう現場のご苦労もよくわかるのだが、今回上川大臣の一件で「切り取り」批判が起こるように、そういう特権階級的な振る舞いをしていると、いずれマスコミの存続そのものを揺るがすような大問題に発展するかもしれない。

 そこで提案だが、ニュースのタイトルをつける方たちに研修をされたらどうか。題して「ネットやSNSで切り取りだと叩かれないためにはどうすべきか」――。

 私も20年以上、このような問題を扱ってきたので、それなりに語れることはある。自民党でやったものより、実りのある研修にしてみせよう。マスコミ上層部の皆さんは、ぜひ検討してもらいたい。

(ノンフィクションライター 窪田順生)

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