半導体 “狂騒”の真実#3Photo by Masato Kato

政府の半導体政策を後押ししてきた自民党・半導体戦略推進議員連盟は5月13日、政府に支援継続を求める提言を採択。次世代半導体の量産を目指すラピダスの支援をはじめとして、取り組みを一層加速すべきだと訴えた。特集『半導体 “狂騒”の真実』の#3では、キーマンの甘利明・自民党同議連会長を直撃し、今後の政府の半導体支援の見通しを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 村井令二)

各国政府も半導体支援を強化
ラピダスは勝負を懸けるタイミング

――米国政府が米インテル、台湾TSMC、韓国サムスン電子、米マイクロン・テクノロジーと、巨大半導体企業に向けて、それぞれ1兆円規模の大型支援を決定しました。日本でも、今年2月にTSMCへ7320億円、4月にラピダスへ5900億円と公的支援の金額が拡大していますが、今後の政府、自民党の支援方針について教えてください。

 各国政府が半導体への支援を強めています。日本は半導体支援を一度始めた以上、覚悟を持ってやり続けなければなりません。

 もちろん補助金は入れっ放しではない。TSMCへの補助金は、試算でも10年後に税金で回収ができる見込みです。その先もTSMCは日本での生産を続けるので、いずれ、税金としてどんどん回収できる場面に切り替わるでしょう。同様に補助金を投入したマイクロンも同じパターンです。

 一方で問題なのが、ラピダスです。すでに累計9200億円以上の資金が入っていて、今後も自立するまでは国の支援が中心になると思います。ただし、期待以上の成果も見えてきて良い将来図が描けているので、ここで“降りる”という判断はありません。

 まさに勝負を懸けるタイミングですが、そろそろラピダスは国の支援だけではなく、ある時点から出資者に働き掛けていくことになり、政府の補助とは別の手段でお金を集める話がだんだん始まっていくでしょう。

「日本の半導体支援の手綱を緩めれば、これまで積み上げてきたことが“水泡に帰す”」――。自民党半導体議連は5月13日の提言で強い危機感を示した一方で、財務相の諮問機関の財政制度等審議会は5月21日の建議で、半導体産業の支援について「安定的な財源と一体で戦略を描くべき」と指摘するなど半導体の巨額支援を巡って逆風も吹く。甘利氏は、これからの日本の半導体戦略をどう描くのか。次ページで、ラピダス支援、財源確保、TSMC第3工場誘致の見通しなどについて、余すところなく語ってもらった。