最先端半導体の国産化を目指す国策会社、ラピダスが事業立ち上げ準備を本格化させている。2024年末には半導体の微細化に欠かせない極端紫外線(EUV)露光装置を工場の建屋に搬入し、25年4月に試作ラインを稼働する計画だ。特集『狂騒!半導体』(全18回)の#14では、ラピダスの東哲郎会長に、人材育成、資金調達、顧客開拓、台湾TSMCへの対抗策など、最新の動向について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 村井令二)
ラピダス立ち上げは「順調」
“IBMも驚く”優秀な人材が集結
――2022年11月に国の補助金700億円を受けてスタートしたラピダスは23年2月に北海道での工場建設を発表し、同年4月に2600億円の追加支援が決定。事業立ち上げの準備が本格化してきましたが、これまでの歩みをどう振り返りますか。
予算はトータルで3300億円。これは工場に必要な製造装置の購入やIBMとの技術提携に必要な資金です。昨年9月に工場の起工式を執り行って工場建設は順調に進んでいます。米IBMへの技術者派遣は100人規模に達しましたが、今年中に200人規模にします。
表面的には全部上手く行っていますが、課題があるとすれば、会社をサステナブルに成長させるための人材育成。これは根本的にやっていかなければならないと思っています。
――人材獲得についてラピダスは量産を開始する27年までに1000人規模の社員を確保することを目指しています。
1月の段階で社員は約300人になりました。毎月入社式をやっていて20~30人ずつ増えています。日本が半導体市場の半分のシェアを握っていた90年代初めに半導体メーカーに入って活躍した熟練の人材が多い。彼らは「半導体は産業のコメ」ともてはやされていた時代に入社し、日本の半導体メーカーが世界市場で競争力を落としていく様をじくじたる思いを抱きながら見てきました。
(最先端半導体技術で提携する)IBMから驚かれるほどの優秀な人材がたくさんいます。現在、ラピダス社員のうちドクター(博士)は約25%で、マスター(修士)は約30%。その構成比の高さは日本では珍しいと思います。
それほど優秀な人たちが集まっていますが、課題は、その経験を引き継いでいく若い人材です。大学院卒、大学卒、高専卒の新卒や、社会人経験のある若い人たちをもっと増やしたいです。各地方の大学では半導体のコースが次々にできていますが、若い人たちに半導体産業に入ってみたいと思ってもらえる仕掛けをつくらなければなりません。
ラピダスの準備が「順調」に進んでいることをアピールする東会長。今後は、“2ナノメートル”半導体の量産技術の確立に加え、資金調達と顧客開拓が大きな課題となる。次ページでは、米エヌビディアや米ブロードコムなど業界最先端のプレーヤーとの交渉や、半導体受託生産の最大手である台湾TSMCへの対抗策など、ラピダスを取り巻く現状について語ってもらった。