半導体 “狂騒”の真実#1Photo:JIJI、Reiji Murai

ソニーグループが熊本県に2つ目の半導体工場の建設開始の準備に入ったことがダイヤモンド編集部の取材で明らかになった。半導体の需要拡大に応じて増産投資に入るが、そんな中でソニーは2024~26年度の半導体イメージセンサーの設備投資額を過去3年の9326億円から約3割削減する計画を打ち出した。特集『半導体“狂騒”の真実』の♯1では、半導体の需要拡大が見込まれるにもかかわらず、ソニーが設備投資の削減方針を打ち出した複雑な内部事情に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

熊本県内でTSMC工場に続く
半導体新工場の巨大プロジェクト始動

 熊本県合志市。台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県菊陽町に建設した第1工場「JASM(ジャスム)」から車で数分の場所に広大な敷地がある。

地元関係者によると、以前まで農地と林地ばかりの土地だったというが、すでにほとんどが更地に造成され、無数の巨大クレーンと大型杭打機がずらりと立ち並んでいた。

「JASMの工事で使われていたクレーンや杭打機がそのまま運び込まれたのではないかと思うほどの大規模工事だ」

  熊本県の経済界の関係者がTSMC第1工場に続く大型工事として期待を寄せているのは、ソニーグループの半導体イメージセンサーの新工場の建設だ。

 建設の正式着工までにはいくつかの手続きが残っているとみられるためソニー自身は沈黙を貫いているが、地元では「すでに建設作業は始まっている」と受け止められているのが実態だ。

 そんな中でソニーの十時裕樹社長は5月の経営方針説明会で、2024~26年の3カ年のイメージセンサーの設備投資を「過去3年の水準に比べて3割減額」したことを明らかにした。

 ソニーの半導体イメージセンサーは、米アップルのiPhoneなどスマートフォンのカメラに使われるセンサー部品だ。スマホの出荷台数は飽和しているが、1台あたりのカメラの大判化が進んでいることでソニーのセンサーの需要は拡大している。新工場の建設に乗り出すこのタイミングで、イメージセンサー全体の設備投資計画を大幅減額したのはなぜなのか。

 次ページでは、ソニー半導体の“熊本第2工場(仮称)”の建設現場の最新状況をレポートする。さらに、その中で24~26年度のイメージセンサー設備投資額を3割減額した内部事情を明かしていく。