「“研修の転移と評価”実践会」の立ち上げと活動

 研修が転移しているかどうかを知るには、「評価」が必要となる。関根さんは、2023年9月に「“研修の転移と評価”実践会(*2)」というコミュニティーを有志メンバーとともに立ち上げた。参加者は、関根さんを含めて15人(*3)。関根さんがメールマガジンで参加を呼びかけ、手を挙げた人事(研修)担当者や研修ベンダー、コンサルタントなどがメンバーになっている。

*2 株式会社ラーンウェルの「研修の転移と評価 実践会」レポート_2401  はこちら
*3 実践会メンバー=泉暢さん、大島伸一さん、河合麻衣子さん、川合正伸さん、口田祥代さん、田中康義さん、冨高晃子さん、永田正樹さん、髭直樹さん、町田敬一さん、山本恭子さん、山本美穂さん、宮澤俊彦さん、汐中義樹さん

関根 そもそも、“研修の転移と評価”という行いは、重要度は高いけれど、緊急度は低いものです。多くの人事(研修)担当者は、「いつか、時間ができたらやろう……」というふうに、ついつい、タスクを先延ばしにしがちなので、緊急度を高めるために、有志を集めて“実践会”を行うことにしたのです。2023年9月に第1回を開催し、その3ヵ月後の12月(第2回開催)までに、各自が担当する研修の「転移度(現場での実践度)」の測定を行い、その結果を報告し合いました。

 測定に用いたのは、「SCM:Success Case Methodアンケート」です。(1)研修で学んだことを、職場で活用し、良い結果が出た、(2)研修で学んだことを、職場で活用したが、まだ結果は出ていない、(3)研修で学んだことを、職場で活用しなかった、の3つの選択肢で、それぞれのメンバーが行った研修の転移度(現場での実践度)を共有しました。「SCMアンケート」をとることが、“研修の転移と評価”のための最初の一歩ですが、一般的に、研修の数ヵ月後に、受講者へのアンケートを実施していない企業が多いです。その理由のひとつは、人事(研修)担当者に「怖い」という思いがあるからでしょう。自分たちが行った研修の学びを「やっていない」「忘れた」と受講者に答えられるのが怖いのです。また、「研修なんか意味がない」と周りから言われ、人事(研修)担当者自身もそう思ってしまうケースもあるようです。しかし、受講者にアンケートをとると、予想外に良い結果が返ってくることもあります。研修が日々の仕事に役立っていることがわかると、人事(研修)担当者のモチベーションも上がります。

 フォロー研修ができなくても、研修実施の数ヵ月後に“転移”状況を知るためのアンケートを行う――それなら、人事(研修)担当者はさほどの苦労がなく実践できそうだ。

関根 まずは、受講者本人に転移しているかどうかを聞いてみる。そこから見えてくることがたくさんあります。「実践会」では、今年(2024年)の4月からも、メンバーが受講者へのアンケート調査を行っています。言うなれば、この実践会の活動自体が研修のようなもので、会における討議がメンバーそれぞれの職場に活かされています。新しいメンバーにも参加してもらい、活動が広がっていけたらいいですね。

「“研修の転移と評価”実践会」の目標は、「研修の転移と評価を、楽しく♪、簡単!、刺さるものに」というものです。“研修の転移と評価”と聞くと、「難しい、面倒くさい」という印象を持つかもしれませんが、そうではなく、楽しく簡単で、かつ、経営層に刺さるものにしたいと考えています。どんな研修でも、目的は受講者の行動変容であり、それによって、組織が良くなること――研修の転移と評価は、そのための手段なのです。