魅力的でありながら「他人の気持ちがわからない」「平気で他人を利用する」という人は、俗にサイコパスと呼ばれる。そんなサイコパスは起業家や政治家などの勝ち組に多いという説もあるが、その理由を考察していこう。※本稿は、中島啓勝『ておくれの現代社会論:○○と□□ロジー』(ミネルヴァ書房)の一部を抜粋・編集したものです。
サイコパスと呼ばれる人々が
日本国内に120万人もいる?
「サイコパス」という言葉をご存知だろうか。
ちょっと考えてみて欲しい。あなたの周りにこのような人はいないだろうか。
見た目やおしゃべりが非常に魅力的で、いつも堂々としており、凡人には真似できないほどの大胆さで挑戦的な行動をとることができる人。大言壮語を吐き、自信満々で、周囲の批判に決して折れない不屈の精神を持っている人。人付き合いにも積極的で、有力な支援者や、または熱狂的なファンのような味方を得るのがとても得意だが、ある日突然そうした人たちと袂を分かって、平然と対立するグループの人々と仲良くなる人。確かに他人にはできない仕事をやることはあるが、継続性がなく飽き性で、最終的には何を成し遂げたのか疑問が残る人。
実は、こういう人たちの中には、いわゆる「サイコパス」と呼ばれるような性質を持つ人が紛れ込んでいるかも知れないというのだ。
脳科学者の中野信子によるその名もズバリな著書『サイコパス』によると、この用語は元々、連続殺人犯などの反社会的人格を説明するために開発された診断上の概念で、精神医学の専門家の間では近年は「反社会性パーソナリティ(人格)障害」と呼ぶことが多いという。
しかし、以前から広く用いられてきた「サイコパシー(精神病質)」や、「ソシオパシー(社会病質)」などの名称もほぼ同義の概念として今も使われているようだ。専門家でもない我々にとっては、「反社会性パーソナリティ障害」よりも「サイコパス」の方が圧倒的に馴染みのある呼び名だと言えるだろう。
もちろん馴染みがあると言っても、この言葉から連想されるイメージはかなり非日常的で恐ろしいものに違いない。フィクションの中に登場する悪魔のような登場人物を思い浮かべる人もいるだろうし、実際に社会を震撼させるような凶悪事件を引き起こした猟奇殺人犯のことを思い出すという人もいるかも知れない。