誰の心にも潜む「ゆるサイコパス」、自分がうっかり加害者や被害者にならない方法写真はイメージです Photo:PIXTA

ストレス社会では、誰もが他人を攻撃する「ゆるサイコパス」になる恐れがある。また、被害者になるのを避けるためには、人間関係のポジション替えが大切だ。社会問題になりつつある他者への攻撃を防ぐ考え方をプロが解説。

※本稿は、高品孝之『攻撃する人の心理がわかる本』(自由国民社)の一部を抜粋・編集したものです。

「人間ドラマの三角形」でポジションを替えていこう

 武術には合気道のように相手の力を自分の攻撃に利用するという技術があります。

 相手の力が強ければ強いほど反撃する力も増大するため、最小の力で相手をやっつけることができます。

 いじめやパワハラなどの心の攻撃にも同じような方法があります。それは、「人間ドラマの三角形」を使うこと。これは約50年前に、スティーブン・カープマンという人が提唱した法則です。

 この法則では、特定の人からいじめや暴言などの攻撃を受けた時、「攻撃をする者」「攻撃を受ける者」「攻撃を受ける者を援助する者」の三者の立場に分けて考えていきます。

誰の心にも潜む「ゆるサイコパス」、自分がうっかり加害者や被害者にならない方法カープマンの「人間ドラマの三角形」 拡大画像表示

 例えば、学校である生徒がいじめられている場合は、「いじめている側」「いじめられている側」「いじめられている子をサポートする保護者や教師などの第三者」という3つの役に分けられます。

 カープマンは、攻撃をする者を「迫害者」、攻撃を受ける者を「犠牲者」、攻撃を受ける者を援助する者を「救済者」と名づけているので、本書もこの用語で説明します。

 なお、救済者には、実際に犠牲者を強く救済してくれる人だけではなく、救済する立場にいるけれども実際には救済していない人をも含めます。

 例えば、いじめられている生徒を救済するはずの教師であっても、いじめられている生徒がその事実を訴えているのに何もしてくれないことがあるかもしれません。それでも、その教師もとりあえず救済者とします。

 救済しているポーズをしているけれど本質的に救済につながっていない場合もあるかもしれません。いじめられている生徒の相談には乗るけれど、いじめられている生徒に強い働きかけをしない教師などがいればこれに当たります。

 カープマンの「人間ドラマの三角形」のポイントは、「迫害者」「犠牲者」「救済者」は、簡単にポジションが替わるということです。

 救済者だった教師が迫害者に替わったり、犠牲者であるいじめられている生徒が救済者に回ったりすることがあるということです。

 ということは、迫害者であるいじめている生徒を犠牲者のポジションに導くこともできるのです。

 では、ポジションを替えるためにはどうすればよいでしょうか。

まずは犠牲者のポジションを抜け出そう

 一番大切なのは、人間ドラマの三角形の迫害者と犠牲者のポジションが固定される前に三角形のローテーションを回してしまうことです。

 犠牲者のポジションに固定されてしまうと、そこから抜け出そうという意思がなかなか湧きません。ですから、できるだけ早く行うことが重要です。

「反撃する」と意思を固めるより前に、「私は犠牲者にならない」と固く決意することが重要なのです。飼育され、サンドバックにならないことです。

 いじめられる側がよいサンドバックになると判断されてしまうと、いじめの火はどんどん燃え広がり、最悪の事態を招きかねません。「死の欲動」が働き、相手を「無機質にしたい、意味のないものにしたい」という欲求が強くなってしまうためです。

 もしも犠牲者の位置に自分が置かれたら、心の中でポジションを替えるために、まず何をすればよいでしょうか。

 それは、犠牲者を新たにつくることです。そして、自分は救済者のポジションに移動するのです。犠牲者の位置に誰かを据えることで、自分は犠牲者にならずに済みます。

 といっても、迫害者に別の人をいじめるように仕向けるのではありません。犠牲者というのは、あくまで「想像の中での犠牲者」です。

 あなたが犠牲者のポジションにいたとしたら、心の中に別の犠牲者をつくりだし、あなたは素早く救済者のポジションに回るのです。

 新たな犠牲者は、迫害者の利益や損失に関わらない人物であることが望ましいでしょう。ご自身が深く思いを込められる人が理想的です。

 新たな犠牲者として据えるのにふさわしいのは、普段あなたのことを心配してくれている家族、例えば、両親や配偶者、お子さんなどです。いじめの現場と関係ない親友などでもよいでしょう。

「私がいじめを受けることで、妻(夫)がとても悲しむ」とか、「心労でお母さんの健康が損なわれる」など、あなたへの攻撃が間接的に新たな犠牲者への攻撃になるとの認識を持つことが大切なのです。

 そのうえで、「妻(夫)を守らなければならない」「お母さんに元気でいてもらうために、いじめを止めさせなければならない」と強く思い込むことで、あなたが犠牲者として膠着していたポジションから抜け出すきっかけをつかむのです。

「そんなこと想像ができない」「無理がある」などと思われる方は、次のように考えてみてください。

 もし、あなたがいじめを苦にして自殺でもしたら、あなたの家族や大切な人は本当に健康を損ねてしまうかもしれません。一生あなたに心をとらわれたままとなるかもしれません。その人を守るという強い思いが、自分を犠牲者から救済者のポジションに移動させるのにひと役かってくれます。

 そのためにも、まずは「誰かを助けるために、自分はいじめやパワハラを受けてなどいられない」と強く思うことが、心のエネルギーを燃やすチャンスになります。

 犠牲者のポジションから抜け出すには相当のエネルギーが必要です。自分の大切な人を助けるという強い思いがあなたを後押ししてくれます。

 大事なことをまとめると、次のようになります。

(1)想像上の「新たな犠牲者」をつくる。「新たな犠牲者」は迫害者と直接の知り合いではない人がよい。自分に親しい人を新たな犠牲者に据えると、自分が犠牲者のポジションから抜け出す強いエネルギーになる。反撃すると決意する前に、まず犠牲者にならないという気持ちが大事。

(2)「新たな犠牲者」を援助するために、それまでの「犠牲者であったあなた」が救済者となる。その際「新たな犠牲者」を守らなければならないと真剣に思い込む。

自分自身の攻撃から身を守ろう

 誰の内側にも、他者や自分を傷つけたり、攻撃したりする「ゆるサイコパス」が潜んでいる可能性は充分にあります。

 そこで、最後にあなた自身の攻撃を防ぐ方法をお伝えしましょう。あなたの中のゆるサイコパスの存在をまずは受けいれ、自暴自棄で自分を傷つけたり、他の人を攻撃しないよう対策をしましょう。