半夏生両足院(東山区)の書院前庭に彩りを添える半夏生 写真提供:両足院

梅雨の時期にも、京都は花で包まれています。不思議な植物「半夏生」、水辺に映える花菖蒲、京都市街や琵琶湖の絶景と共にさまざまなバラを楽しむことができる天空の花園。青空の爽快感と梅雨空のしっとりとした趣を満喫しに、6月も京都を訪れましょう。(らくたび、ダイヤモンド・ライフ編集部)

祇園で出合う夏の「花」

 京都の夏は梅雨から始まります。いつ梅雨入りしたかは、季節の移り変わりの期間のおおむね中日に定められるそうで、今年の梅雨入りは6月6日頃、明けは7月19日の予想。2022年は5月29日頃から、23年は6月14日頃から40日前後続きましたが、今年はそれより少し長め予測と見込まれており、少々うんざりしますね。

 梅雨の時期、京都で見られる摩訶不思議な植物「半夏生」をご存じでしょうか。「はんげしょう」と読み、由来は暦にあります。春夏秋冬の四季をそれぞれ6分割した「二十四節気(せっき)」までは聞いたことがあると思いますが、さらに3分割して約5日ごとに細かにカテゴライズした「七十二候(しちじゅうにこう)」もあるんです。

 1年で最も昼の時間が長くなる夏至。今年は6月21日ですが、二十四節気の「夏至」を3つに分けた3番目、2月の「立春」から数えて30候目に当たるのが半夏生で、この時期に見頃を迎えることから名付けられました。

 白く細長い花穂ではなく、葉緑素が抜けて白色に変わった葉の半分を愛(め)でる珍しい植物で、別名「半化粧」とも。湿気の多い場所に生息するドクダミ科ハンゲショウ属の多年草です。ちなみに、「半夏」とも呼ばれるサトイモ科の「カラスビシャク」は、古来漢方薬として重用され、田植えの時期の目安にもされていたそうですが、すっかり半夏生にお株を奪われてしまいました。

 京都で出合える半夏生の誰もが認める随一の名所は、京阪本線「祇園四条」駅徒歩7分ほど、祇園にあり京都最古の禅寺である建仁寺の塔頭寺院、両足院(りょうそくいん)でしょう。室町時代の1358(延文3)年に、建仁寺第35世龍山徳見(りゅうざんとっけん)により「知足院」として開かれました。

 通常非公開の方丈や書院庭園も半夏生の見頃に合わせて毎年特別公開され、今年は6月1日から 7月14日までとなっています。単体で見ると素朴で控えめな存在感ですが、群生すると緑と白のコントラストが壮観で、書院に座して眺めると、禅寺の凛とした空気と相まって心も整います。

 保全のため事前申し込みが必要で、午前のみの3部制(各15人)と限られていますが、庭に出て池のほとりを散策すると、半夏生をより間近に感じることができ、おすすめです。

 半夏生を観賞した後は、境内北側にある毘沙門堂へも立ち寄りましょう。軍師・黒田官兵衛の長男で戦国武将の黒⽥⻑政が、関ケ原の合戦に出陣する際、かぶとの内側に毘沙門天像を納めて戦いに臨み勝利した逸話にちなみ、「勝運」のご利益で信仰を集めています。毘沙門天のお使いにちなみ、シンボルは虎。堂の前には狛犬ならぬ「狛虎」の姿が見られ、虎がモチーフのお守りやおみくじなど授与品には、阪神タイガースファンでなくても心が動きます。

 さらに今年2月には、“Myお守り”を作れる「結守(ゆわいまもり)」が誕生しました。デザインもすてきな100種類ものお守り袋から好みの1種を選び、願い紙と祈祷済みの木札、塗香を包みます。心を込めてお守りを結び、大切な人へ贈るのも良いかもしれません。

 七十二候で3つに分けられた夏至の、半夏生の手前は「菖蒲華(あやめはなさく)」と呼ばれます。次は菖蒲の名所にご案内しましょう。

両足院の書院前庭両足院の書院前庭。雨の日は幽玄な雰囲気が増す 写真提供:両足院