中国が7.4兆円「半導体」ファンドを新設、ファーウェイ新スマホが占う米中対立 2023年9月5日、中国・上海のファーウェイブランドの店舗で、新型スマートフォン「Mate 60 Pro」を体験する顧客 Photo:CFOTO./gettyimages

ファーウェイ新型スマホで明らか
「7兆円」補助金政策で徹底抗戦の中国

 23年8月、世界に衝撃が走った。ファーウェイが発表した新型スマホ「Mate 60 Pro」に、回路線幅7ナノメートルの「Kirin 9000s」チップが搭載されたのだ。それは、米国政権にとって想定外の事態といえる。バイデン政権の対中制裁は、期待された効果を上げることができなかった。

ファーウェイ新スマホの背景に中国「7.4兆円」半導体ファンド、日本に残る“優位性”とは<br />バイデン政権の対中制裁は、期待された効果を上げていない Photo:PIXTA

 米シンクタンクによると、米国が制裁を実行する以前から中国企業は在庫を積み増していた。ファーウェイは、TSMCからのチップ調達を、SMICなどは、日米欧の製造装置メーカーから購入を増やしていたのだ。中国企業は、在庫に積み増した輸入半導体関連品を分解し、模倣し、改良を重ねて、結果的に先端チップの設計と製造技術を習得するに至ったとみられる。

 現在、中国政府は補助金政策を一段と強化している。地方政府は、半導体企業に土地を低価格で供与し補助金を支給する。ここ数カ月間の中国の生産活動の持ち直し、購買担当者景況感指数(PMI)の上振れは、産業支援策の拡充を示唆する。

 5月末、中国の中央政府が、国策ファンドである国家集成電路産業投資基金で新たに、過去最大の3440億元(約7兆4000億円)の資金を注入した。補助金政策の強化で、中国の半導体企業はより積極的にリスクを取り、新しいチップ製造技術の開発に取り組むことができる。

 ファウンドリー分野で、SMICグループなどは回路の線幅をより細くする微細化を強化し、チップレット生産方式への対応も進めている。チップレット生産方式とは、複数のチップを組み合わせ、AIトレーニングなど特定の機能をよりよく発揮する半導体を生産するプロセスをいう。

 SMICなどのニーズに対応するため、製造装置分野では北方華創科技集団(NAURA)や中微半導体設備(AMEC)などが研究開発を強化している。半導体関連の部材の分野では、ジンセミ(新昇半導体)やエスウィン(奕斯偉材料技術)などがSMICなどにシリコンウエハーなどを供給している。汎用型のチップ製造から段階的に国産部材の投入が進んでいるようだ。必要な製造ノウハウに習熟するため、中国半導体産業全体で高い賃金を支払い、海外の専門人材を獲得することも進めている。