半導体調達で米国の「台湾依存」が高く
トランプに続きバイデンも対中包囲網を強化

 現在、半導体分野で米国は相対的な優勢性を維持している。チップの設計・開発・製造などに関する知的財産面で米国企業の競争力は高い。それは、世界の政治・経済・安全保障でトップの地位を米国が維持するために欠かせないことだ。

ファーウェイ新スマホの背景に中国「7.4兆円」半導体ファンド、日本に残る“優位性”とは台湾でTSMCは、最先端の回路線幅3ナノメートルのGPUなどを生産する Photo:PIXTA

 特に、AIチップ分野では米エヌビディアが世界シェアの約80%を握る。エヌビディアは画像処理半導体(GPU)の設計と開発を主に行う企業だ。生産を台湾のTSMCに委託したことで、同社の収益性は急上昇した。

 台湾でTSMCは、オランダのASMLなどから製造装置を調達し、最先端の回路線幅3ナノメートル(ナノは10億分の1)のGPUなどを生産する。ASMLは米国の知的財産などを使って、世界で唯一、極端紫外線(EUV)を用いた露光装置を製造する実力を持つ。ASMLは現在、米国などで研究開発、人材のトレーニング体制を強化している。

 ASMLや日米の半導体製造装置メーカーは、米国の知的財産を活用しつつ、専門家を世界の半導体工場に派遣して、重要部材の投入や製造装置の動作などを繊細に調整している。これにより、TSMCは先端チップの量産体制を確立し、良品率を向上させてきた。

 米国のIT先端企業は、国際分業体制を強化することで製造体制の構築に必要な資本支出を抑えてきた。一方、日欧台韓の企業は、需要者のニーズに対応し効率良く成長してきた。

 そうしたことから、半導体調達では米国の「台湾依存」が高くなった。米国は、半導体の調達リスクを分散しつつ、中国の半導体産業の成長を阻止したい――。トランプ前政権はこの考えを実行に移し、対中半導体規制などを施行した。

 続くバイデン政権も、対中包囲網を強化した。22年10月の対中規制は重要な転換点である。AIのトレーニングなどに必要な、先端分野の演算装置やメモリーの対中輸出管理を厳格化したからだ。日米欧の半導体製造装置メーカーが、中国企業にメンテナンスなどを提供することも難しくなった。規制強化によって、例えば、中国の大手ファウンドリー・中芯国際集成電路製造(SMIC)の微細化が遅れるなどの影響も出た。