ファーウェイ新スマホの背景に中国「7.4兆円」半導体ファンド、日本に残る“優位性”とは<br />photo:CFOTO / gettyimages
ファーウェイ新スマホの背景に中国「7.4兆円」半導体ファンド、日本に残る“優位性”とは<br />Photo:NurPhoto /gettyimages

中国は車載用半導体の25%を国産品に
調達網不安の中で存在感を高める日本企業

 今秋発表予定のファーウェイの新型スマホは、回路線幅5.5ナノメートルのチップを搭載すると予想する専門家は多い。現時点で最先端の3ナノチップに関しても、中国企業が開発に着手したとの観測もある。

 中国政府は、25年までに車載用半導体の25%を国産品にするよう、自動車メーカーに指示している。中国はチップの国産化を強化し、自国で事業を運営する内外企業に国産チップの使用をより強く求めるだろう。

 一方、米国は覇権国の座を守るため、TSMCなどの半導体メーカー、サプライヤーに補助金を支給して対米投資の積み増しを求めている。台湾辺境の緊迫化もあり、台湾からの半導体生産能力の地理的分散も加速している。データ主権の確立で、米国が中国製品の締め出しを強化する可能性も高い。

 今後の展開次第では、米中で半導体など先端分野の供給網が寸断、分断され、世界経済の不安定感が高まる恐れがある。そうした環境下、わが国企業を重視する、世界の主要半導体メーカーは増えている。一例として、AI向けメモリーのHBM(広帯域幅メモリー)でトップのSKハイニックスも、わが国企業との連携を目指す考えを示している。

 その背景にあるのは、日本の有力サプライヤー企業の存在だ。半導体の部材や製造装置分野で競争力の高い日本企業は多い。特に、チップレット生産方式に必要な研磨剤、封止剤、配線関連素材の製造・加工技術というのは、一朝一夕で習得できるものではなく、日本企業の優位性は顕著だ。

 当面、半導体分野で米中対立が収まることはない。わが国は、ラピダスによる早期量産の実現に加え、サプライヤーの製造能力を向上する支援を強化すべきだ。それは、対日直接投資の増加に重要な影響を与える。

 わが国産業界との関係強化を目指す企業の増加は、国際世論での発言力にプラスの影響をもたらす。米中半導体戦争の激化で、世界のサプライチェーンがより不安定になるリスクがある。リスクを抑制するためにも、製造技術の重要性に基づいた中国向け半導体輸出管理の国際的な枠組み、ルール策定の必要性は増すだろう。半導体分野での対日直接投資の増加は、日本がそうした分野で発言力を強化するために重要だ。日本経済の競争力回復にも寄与する可能性は高いといえる。