まず走り出すことの大切さ――知性と感性の蓄積づくり
篠田 まだまだお聞きしたいことだらけなのですが、お時間もありますので最後に1つだけ。資生堂の会長をなさっていた福原義春さんの『文化資本の経営』(NewsPicksパブリッシング)という本が少し前に復刊され、私も推薦のコメントを寄せさせていただきました。
その本の中に今日のお話に通ずる印象的な一節があるんです。それが「文化とは、知性と感性の蓄積である」という福原さんの言葉です。
今日のお話を伺っていて、「知性」とはまさにチーム内の知を共有し、組織が学びを深めていくこと、「感性」というのは目の前の相手にちゃんと意識を向けて、その人の価値観にまで関心を持つことなんだなと私なりに解釈しました。
そして、それを「蓄積」するために必要なのが「場づくり」です。場をつくったら、あとは繰り返し繰り返し、そこで対話や行動を重ねて蓄積していく。そうやってつくられていくのが組織の文化なんだなと。すべてが自分の中でつながった感覚があります。
村瀬 すばらしいですね。ぼくも最後に1つだけお伝えしておくとするなら、「どんなことに価値があるのか」「なにを目指すべきか」があらかじめわかっているケースなんて、ほとんどないということです。むしろ、ひとまず走り出してみて、それこそ「蓄積」を重ねていったあと、ある時点でそれを振り返ってみて初めて、「ああ、これが大事だったんだな」「ここを目指していたんだな」という解釈が生まれるにすぎない。
ですから、とくにリーダーのみなさんは、あまり慎重になりすぎないほうがいいと思います。まず走り出してみる。「これが自分たちの価値観だ」と見渡せるところまでは、ひたすらやりきってみようとする姿勢も必要だと思いますね。
篠田 いやー、めちゃくちゃ解像度が上がりました。贅沢すぎる時間…。本当にありがとうございます。最高でした!
村瀬 ぼくもお話ししていてとても心地よかったです。こちらこそありがとうございました!