売れなかったGEISHA GIRLS
大ヒットしたH Jungle with t

 GEISHA GIRLSは世間では大いに話題になったが、アルバムは音楽的に凝り過ぎていたせいか、期待されたほどのセールスには至らなかった。このアルバムには、当時イギリスで爆発的に流行していたジャングルが取り入れられているが、その内の一曲「炎のミーティング」を担当した小室哲哉は、『THE GEISHA GIRLS SHOW――炎のおっさんアワー』のリリース直前に、浜田雅功をヴォーカルに迎えたユニット、H Jungle with tとして、日本初のジャングルという触れ込みの「WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント~」で大ヒットを飛ばしていた。

 1995年6月、GEISHA GIRLSのアルバム・リリースに合わせて、小室哲哉がフジテレビでMCを務めるトーク番組『TK MUSIC CLAMP』に坂本龍一がゲスト出演している。この対談は活字化され、「NON EDIT TALK」というタイトルで、番組の公式ホームページ上に掲載されているが、互いに探り合うような序盤から次第に話が盛り上がっていく様子が生々しくドキュメントされていて、大変に面白い。

 たとえば、次のようなやりとりがある。

坂本:(…)ウチの娘がね、小室さんのすごいファンなんで。(…)子供だ子供だと思ってたら、もう完全にハマってるんですけどね、あの、それで彼女に「これ読んでみなさいよ」なんて言われて、小室さんのなんかインタビューを読んで、もう「自分のやっていることは100%マーケティングだ」と。(…)その潔さっていうか、潔白な感じで、あの、彼女はすごくいいっていうわけ。僕なんかは、それがなかなかできないタイプの人間だから。うーん、そうかなぁ。やっぱ僕なんかは「音ありき」で、まあ、音から始まる。でね、なかなかね、学ぶことがありますけどね。

小室:そんなことはないんですけど。あの、だから、裏方は好きなんですけど、ウケるのは好きなんですよ。もう、基本的にウケないとやだっていうとこが昔からあったから、その、「どういうのが好きなの?聴きたいの?」っていうのを、まずやっぱり知りたいっていう習性からだと思うんですよね。だから、それを聞かない前に出しちゃうと、怖いと思うんですよ、自分では。