【名医が解説】老後の「寝たきり」と「腰痛」予防、最も大事なこととは?写真はイメージです Photo:PIXTA

歩く能力を向上させることは「寝たきり」の最大の予防になる。長い時間、長い距離を歩ける体を維持するためには、どんなことに気をつければいいのか。老後の筋力低下を防ぐための方法をリハビリのプロが解説する。本稿は、角田亘『リハビリの名医が教える 寝たきりにならない最高の方法』(エクスナレッジ)の一部を抜粋・編集したものです。

安静は筋力低下の大敵
使わないと体は衰える

「廃用症候群」という言葉があります。体を使わないこと(不活動になること)で、身体機能が低下することを指す言葉です。

 廃用症候群は体のいろんなところにあらわれます。たとえば、関節を動かさないことで関節が固まってしまう関節拘縮、あるいは寝たきりの人に起こる床ずれ(じょく瘡)も廃用症候群の症状の1つです。

 廃用症候群でもっとも重要なものは筋力低下(および筋萎縮)です。高齢者の場合、1週間安静にしているだけで、筋力が10%近く減少したというデータもあります。安静は筋力低下の大敵なのです。

 たとえば、動かずに歩かないことによって足腰の筋肉量が減って筋力が低下すると、歩くことが大変になります。

 歩くのが大変になると、余計に歩かなくなるので、食欲もわかなくなります。すると食事の量が減って低栄養と呼ばれる状態になり、廃用症候群の1つである足腰の筋肉量の減少がさらに進みます。

 そうなると歩行がますます不安定になって、転倒・骨折しやすくなったり、家の中に閉じこもることでうつ状態になったりもします。

 さらに活動性の低下により認知機能の低下が起こることもあります。筋肉量の減少が、このような悪循環のスタートのスイッチを押してしまうことになるのです。

歩く能力を維持することが
最大の寝たきり予防になる

 歩けなくなると当然のことながら寝たきりになってしまいます。ですから、歩く能力をずっと維持することが最大の寝たきり予防になります。

 安静によってもっとも弱りやすい筋肉は、歩くための筋肉です。歩かない生活を続けていると、それらの筋肉はみるみる落ちていきます。

 あたりまえのことですが、歩くための筋肉をつける、あるいは維持するには、歩き続けるのが一番です。たとえば毎日20分間歩く習慣がついている人であれば、その後の数年間から十数年間においても「20分間歩くことは、ずっと可能になる」はずです。

 できるだけ長い時間、長い距離を歩いたほうが筋力増強への効果も大きいので、屋内よりも屋外での歩行をおすすめします。

 ただ外を歩くときは安全対策を万全にしてください。はき慣れた靴をはいて、動きやすい服装で、歩き慣れた道を歩くようにしましょう。