たとえば、起業家個人が持つ技術的な経験が豊富であったとしても、営業、マーケティングなどの面で経験が乏しいかもしれません。また、起業家個人が持つ社会的資本が限定的である場合や、必要な資金(自己資金)を調達できない場合もあります。起業家が、不足する資源を補うためには、共同創業は有効な戦略と言えるでしょう。

 さらに、創業チームのメンバーが多いことは高い労働力を持つことを意味します。創業チームメンバーが多いほど、お互いに持っていない資源や能力を補完してくれる可能性が高まるでしょう。

 実際に、創業チームメンバーの平均的な人的資本の水準の高さが創業後のパフォーマンスの向上につながる傾向があります(Delmar & Shane, 2006)。

高成長企業の担い手は
必ずしも若い起業家ではない

 スタートアップの成長を実現させているのは、必ずしも若い起業家ではないという証拠を見出した興味深い研究があります(Azoulay et al., 2020)。この研究においては、米国のスタートアップ(個人事業主や従業員0人の企業は除く)を対象に、創業時点での創業者の年齢と創業後の成長や退出といった企業パフォーマンスとの関係が分析されています。

 米国のスタートアップの創業者の年齢は40歳代の前半にピークとなっている一方で、雇用の成長率(創業から5年間)の上位1%のスタートアップに関しては、創業者の年齢のピークは米国全体の創業者のピークに比べて高くなっていることが観察されています。高成長企業の担い手が、必ずしも若い起業家ではないという結果です。

 さらに、この研究は、IPOやM&Aといったスタートアップの成功とみなされる退出方法との関係について分析した結果、創業時点で50歳の創業者を持つ企業がこれらの方法で退出する比率は、30歳の創業者を持つ企業に比べて2倍高かったことが明らかにされています。

 したがって、起業家が持つ人的資本、社会的資本、金融資本が年齢とともに蓄積され、その結果として経験豊富な起業家がアドバンテージを持っていることが示唆されています。