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若い起業家によるスタートアップの成長が注目されることはしばしばある。そのような企業が成功する要因とはなんだろうか。また、起業家は若いほど有利というイメージもあるが、高成長企業の担い手は、必ずしも若い起業家ではないという。スタートアップの成功に必要なことを紹介しよう。※本稿は、加藤雅俊著『スタートアップとはなにか――経済活性化への処方箋』(岩波新書)の一部を抜粋・編集したものです。

スタートアップ成長の
カギとなる3つの要因

 スタートアップが成功するためには、何が必要なのでしょうか。

 スタートアップを含めた小規模企業の成長には、起業家が持つ資源、企業(スタートアップ)の特性、創業後の戦略の3つがうまく組み合わされることが重要性です。

 企業は、創業時点において取引履歴がなく、ルーチンが確立しておらず、組織の正統性が乏しく、組織としての資源をほとんど持っていません。スタートアップは新規性の不利益に直面することで、既存企業と比べて多くの困難に直面します。

 資源や経験のないスタートアップにとっては、起業家(創業者)が持つ資源こそが重要となります。したがって、起業家が創業時点でどのような資源を持っているかということが、創業後のスタートアップの成否を決める上で重要な役割を果たすと考えられます。

高学歴の創業者によるスタートアップの
倒産確率が低いワケ

 スタートアップが成功する上で、起業家の人的資本の役割が強調されてきました。起業家の人的資本とは創業までに受けた教育(学歴)、職務経験、起業経験などを通して獲得した知識やスキルをさします。起業家の人的資本がスタートアップの成否に影響を与える理由は、大きく分けると2つあります。能力効果とシグナリング効果です。

 能力効果は人的資本が企業の成否に直接影響を与える一方で、シグナリング効果は資金提供者や取引先あるいは連携先に対する効果を通して間接的に企業の成否に影響を与えます。

 能力効果は、起業家が優れた知識やスキルを有している場合にはより適切な経営判断が可能となり、スタートアップの成功確率が高まるという効果をさします。

 一方、シグナリング効果は、起業家の人的資本が資金調達先、取引先、あるいは連携先といった外部のステークホルダーに対する、事業のポテンシャルのシグナルとして投資や戦略に好影響を与え、最終的に企業の成功確率を高めるという効果をさしています。

 スタートアップと資金提供者、取引先、連携先などのステークホルダーとの間には情報の非対称性が存在しています。スタートアップの組織の外から見ると、当該企業のポテンシャルを判断するための情報は限られています。このような状況において、ステークホルダーにとっては、起業家が持つ資源や経験といった人的資本に関する情報が、取引を行うかどうかの意思決定において重要な判断材料となります。