成城石井は
「富裕層のコンビニ」として機能
まず最初に成城石井のイノベーションが何だったのかを考えると、それまでは富裕層がわざわざ特定の場所に行かないといけなかった消費需要を、生活動線の近くにシフトさせたということが重要だと思います。
東京を例にお話しします。それまで東京の富裕層が高級食材を買おうとしたら、基本的にはターミナル駅のデパ地下にでかける必要がありました。ないしは青山、広尾、六本木などの高級住宅地にある明治屋や紀ノ国屋のような高級スーパーまで足を運ぶ必要がありました。
成城石井もルーツは同じで、戦前に世田谷区の成城で創業した食品店から発祥しています。それが1976年に成城学園前の駅前のスーパーマーケットに発展して、高級住宅街である成城エリアの富裕層をターゲットに発展します。
そこから現在のように多店舗展開が加速するのは1990年代後半以降です。
一旦出店が加速すると東名阪の富裕層の生活動線の近くに店舗数を拡大し、2010年代には北関東から東北へ、2020年代には中国エリアへとさらに店舗網を広げていきます。そして店舗の空白地域に関しては成城石井.comがカバーするという形で現在の発展を迎えたのです。
つまり成城石井が富裕層マーケットを切り口に発見した事業機会は、いわば富裕層のコンビニとでもいうべき小売業態が存在することでした。その機会を成城石井は着実に全国に広げてきたということです。